ロストワックスによるジュエリー制作は、貴金属加工と比較すると、初心者でも始めやすく、ジュエリー制作入門として取り組まれる方も多いようです。
ロストワックスで作るジュエリーの大きな特徴として、
ワックスの種類が豊富
という事が挙げられます。
そのため、気軽に始めやすい反面、
どのワックス素材を選べばいいかわからない
と悩む人も多いようです。
そこで、この記事では、ワックスの種類について詳しく解説すると共に、
- 各ワックス素材の特徴
- どんなデザインに向いているか
をご紹介したいと思います。
これからロストワックスでジュエリー制作を始めようと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
代表的な2つのワックス素材
まず、ワックスはハードワックスとソフトワックスに分けられます。
ハードワックス
ハードワックスは硬度が高く主にヤスリやリューター等を使い彫刻のように
削り出して使用します。
ハードワックスの色による違いと特徴
ハードワックスには、さまざまな形がありますが、硬さによっても種類があり、主に3つの色で分けられています。
ブルー(ソフト)
柔軟性があり、折れやすい透かし彫り等に適しています。
パープル(ミディアム)
ブルーとグリーンの中間のような、適度な硬さと柔軟性があります。
グリーン(ハード)
硬度があり、面や角をしっかり出したいデザイン等に向いています。
ハードワックス比較一覧表
色 | 柔軟性 | ハンドカービング | 硬度 (ShoreD) | 融点 (℃) | 粘度 |
---|---|---|---|---|---|
ブルー | ◎ | ○ | 52 | 115.5 | 高い |
パープル | ○ | ◎ | 55 | 115.5 | やや高い |
グリーン | △ | △ | 56 | 116.6 | 低い |
なお、他にもいろんなハードワックスがあり、色分けされていますので、気になった方は、各ワックスを購入して試してみて下さい。
ソフトワックス
ソフトワックスの特徴
ソフトワックスは曲げたり伸ばしたり、溶かして盛ったりして使用できます。
ドライヤーなどでもすぐに柔らかくなり、いろんな形で造形が可能です。
ソフトワックスの加工方法
ハードワックスのように、ヤスリやリューターを使用すると、目が詰まってしまうので、ソフトワックスでは余り使用しません。
ソフトワックスで造形する場合は、指やスパチュラが多く使われます。
ワックスの種類と特徴
ワックスには、大きく分けて、
- ハードワックス
- ソフトワックス
の2つがある事がわかりました。
ここからは、
- ワックスの種類とその特徴
- どんなデザインに向いているか
をご紹介してまいります。
ハードワックス
まずは、ハードワックスに見られる、各ワックスの種類と特徴をご紹介します。
チューブワックス
「チューブワックス」は、
主に指輪を作るのに適しているワックスです。
文字通り、チューブ状になっていますので、
好きな幅でカットして指輪を作る事ができます。
チューブワックスの穴は、8号程度になります。
そのため、8号以下の指輪を作りたい場合は、穴が開いていない円柱状のワックスか、後述する「スライスワックス」を使用して制作します。
ブロックワックス
「ブロックワックス」は、
ハードワックスの塊です。
大きな作品や、バングル等に使用できます。
四角の他、円筒形のものもあります。
スライスワックス
「スライスワックス」は、ブロックワックスを、薄く板状にスライスされたワックスです。
サイズの小さな指輪や、ペンダント・ピアスなどのジュエリーデザインに向いています。
ソフトワックス
次にソフトワックスです。
ソフトワックスにはたくさんの種類がありますが、共通しているのは、
低温で溶ける事です。
どのワックスも、
概ね50℃~80℃位で溶けます。
ワイヤーワックス
「ワイヤーワックス」は、
線状のワックスです。
とても柔らかいので、芯金に巻きつけて指輪を作ったり、編み込みや唐草のデザイン等に幅広く使えます。
線の断面は、
- 丸
- 甲丸
- 四角
- 斜め台形
- 台形
- 平板
等さまざまで、直径は0.5mm~3.0mmと、とても種類が豊富です。
シートワックス
「シートワックス」は、
薄く柔らかいシート状のワックスです。
気温にもよりますが、急に曲げると表面に亀裂が生じやすいので、手のひらやドライヤー等で温めながら加工していきます。
デザイン例として、いろんな形に切り抜いて、ふくらみや丸みを持たせたり、リング状にしてソフトワックスを盛って、テクスチャーをつけるのに向いています。
シートワックスの厚みは、0.5mm~3.0mmと豊富にありますが、きれいに鋳造するためには、0.6mm~0.7mmの厚みが必要です。
インジェクションワックス
「インジェクションワックス」は、主に、
量産用のゴム型に注入するために用いられるワックスです。
ゴム型から抽出した、ワックスパターンの再加工や、溶かして盛って作るデザインのジュエリーに向いています。
テクニカルワックス(インレイワックス)
「テクニカルワックス(インレイワックス)」は、
溶かして盛って使うワックスです。
融点が低く、粘度が低いため、溶けるとサラリとしているのが特徴です。
ワックスパターンの傷の修復や、ワックス同士を接着したい時に使用できます。
水溶性ワックス
「水溶性ワックス」は、
水で溶かす事ができるワックスです。
粘土状のワックスで、手でこねて形を作った上にソフトワックスを盛るなどしてデザインしたら、水につけて中の水溶性ワッスクを溶かして使用します。
クレイワックス
「クレイワックス」は、
粘土状のワックスです。
粘土状ですので、手でこねて造形できます。
具象系や、形が不規則なデザインのジュエリーに向いています。
引き目ワックス
「引き目ワックス」は、
お湯で柔らかくなるワックスです。
まるで水あめ細工のような、引き目(筋目)の模様が出ますので、引き目の模様を活かしたジュエリーデザインに向いています。
融点についての注意点
最後に、融点(ワックスが溶ける温度)についての注意点を解説致します。
ワックスの種類ごとに、融点もそれぞれ違います。
例えば、融点の低いワックスに融点の高いワックスを盛ると、
融点の低いワックスは溶けてしまいます。
そのため、ワックスそれぞれの特徴や形状、硬度、融点の違いを考慮しながらデザインに合う最適なワックスを選択するのが大切になってきます。
ワックスの種類と特徴まとめ
以上、今回は「ワックスの種類と特徴」についてご紹介しました。
ワックスには、大きく分けて「ハードワックス」と「ソフトワックス」の2種類があります。
最後に、各ワックス素材の特徴と用途をまとめました。
ハードワックス
硬くて形状を保持しやすく、削って作るジュエリー制作に多用されます。
- チューブワックス
- 指輪制作に適しており、チューブ状。
- 穴のサイズは8号程度。
- ブロックワックス
- 塊状で、バングルや大きな作品向き。
- 四角形や円筒形がある。
- スライスワックス
- 薄い板状で、指輪やペンダント、ピアスに最適。
ソフトワックス
低温(50~80℃)で溶ける柔らかい素材。繊細なデザインや盛り付け加工に適しています。
- ワイヤーワックス
- 線状で柔軟。
- 編み込みや唐草模様のデザインに活用。
- シートワックス
- 薄いシート状。
- 切り抜きや丸みの加工に適し、厚みは0.6~0.7mm以下にならないようにする。
- インジェクションワックス
- 量産用ゴム型への注入に使用。
- 再加工や盛り付けに適する。
- テクニカルワックス(インレイワックス)
- 傷の修復や接着に使用。
- 粘度が低く、サラリとした質感。
- 水溶性ワックス
- 水で溶け、中空デザインの制作に最適。
- クレイワックス
- 粘土状で、自由な造形が可能。
- 不規則なデザインや具象系に向いている。
- 引き目ワックス
- お湯で柔らかくなり、引き目模様を活かしたデザインに適する。
用途別推奨ワックス
- 指輪: チューブワックス、ワイヤーワックス
- 大きな作品: ブロックワックス
- ペンダントやピアス: スライスワックス、シートワックス
- 量産や鋳造: インジェクションワックス
- 細かな修復や接着: テクニカルワックス
- 特殊なデザイン: 水溶性ワックス、引き目ワックス
- 自由造形: クレイワックス、シートワックス
ワックスの素材には、今回ご紹介した材料以外にも、
- ブレスレット用にスライスされたワックス
- 網目状のシートワックス
- パイプ状のワックス
など、まだまだたくさんあります。
ワックスでジュエリーを制作する時に、最初に行う作業は、
これから作ろうとしているデザインの形状と特徴をつかみ、最適なワックスを選択することです。
今回ご紹介した、ワックスの種類と特徴を参考にして頂き、作りたいジュエリーデザインにあったワックス材料を選ぶようにしましょう。