シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」第4回「硬さ(ビッカース硬度)」

貴金属の硬さについて 地金素材

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シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」では、ジュエリー制作に必要な貴金属の特性を勉強していきます。

全5回をご覧頂くと、より貴金属の魅力を知る事ができますので、ぜひ最後までご覧下さい。

 

シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」

前回の記事「融点とろう付け」では、貴金属の素材によって異なる「ろう付け」について解説致しました。

 

第4回の今回は、

「硬さ(ビッカース硬度)」

についてです。

 

貴金属の「硬さ」には、

貴金属特有の性質があります。

 

今回の記事を参考にして頂き、その性質についての理解を深めてください。

 

下記の記事では、「貴金属」について詳しく解説していますのであわせてご覧ください。⇒「貴金属とは?シルバー・ゴールド・プラチナ・白金族について知る!」を見てみる

 

展性と延性について

地金の硬さについて触れる前に、

「展性」と「延性」ついて理解してきましょう。

 

貴金属の中でも、特に「純金」は非常に柔らかい特性を持っていますが、その理由として、

展性と延性について優れいていることが挙げられます。

 

展性とは

「展性(てんせい)」とは、

叩いたり圧力を加えても、地金が破壊されることなく、板のように広げられる性質です。

 

金箔が、その代表的な例で、約0.1ミクロン(1万分の1ミリ)まで薄くすることができます。

破壊される事なく、広げることができる (画像出典:NICアルファマガジン https://alfaframe.com/)

 

延性とは

延性とは、

両端を引っ張っても、地金が破壊される事なく、線のように伸ばされる性質です。

 

丸線が代表的な例になります。

破壊される事なく、伸ばす事ができる(画像出典:NICアルファマガジン https://alfaframe.com/)

 

金は、展性・延性、どちらにも優れているため、薄く広げることができたり、細く伸ばしたりできます。

 

しかし、例えば「鉛(なまり)」は、展性は優れているのに、延性は劣るため、引っ張るとちぎれてしまいます。

 

このように、”金属は見た目に硬い”というイメージがありますが、

形が変形しても破壊されない柔らかさを併せ持っているという事になります。

 

下記の記事では、ジュエリーアクセサリーの作り方について3つの基本的な方法を解説していますので合わせてご覧ください。⇒「ジュエリーやアクセサリーを制作する3つの基本的な技法」を見てみる

 

ビッカース硬度について

貴金属を含めた金属の硬さは

「ビッカース硬度(vickers hardness: HV) 」で表されます。

 

これは、測定する対象物に、ダイヤモンドの四角推の頂点を、ある一定の荷重で押し付けてくぼみをつけ、その大きさを測定して定量化したものです。

数値が高いほど硬度が高くなります。

ビッカース硬度の測定イメージ(画像出典:ジュエリーバイブル)

ビッカース硬度の測定イメージ(画像出典:ジュエリーバイブル)

ビッカース硬度計(画像出典:楽天市場)

 

貴金属による違い

ビッカース硬度について、例えば、

純銀は25〜100HV、純金は25~70HVです。

 

両者を合金にした場合、

・シルバーで、50~155HV
・K18では、140~240HV

となりますので、

18金がシルバーに比べていかに硬いかがわかります。

 

なお、純プラチナは50~110HVです。

下限の数値を、純銀・純金と比較すると約2倍となるため、プラチナは硬い貴金属だと言われることがあります。

 

しかし、 通常の加工で用いられる「Pt900」のビッカース硬度は、60~130HVになります。

 

これは、K18の半分程度、銀合金とほぼ同じくらいになりますので、製品としてのプラチナ(Pt900) はK18と比較すると軟らかく、傷がつきやすいということになります。

 

主な貴金属のビッカース硬度
貴金属 金種 硬さ (HV)
シルバー 純銀 25-100
950銀 50-110
925銀 70-150
900銀 80-155
ゴールド 純金 25-70
K18 (5分割) 140-240
プラチナ 純プラチナ 50-110
Pt950(パラ割 ) 55-120
Pt900 (パラ割) 60-130
Pt850(パラ100、銅50) 120-250

 

金銀・プラチナ、真鍮や銅、鉄も含めて、ジュエリー制作にかかわる地金素材の比重や融点・成分などをまとめました。ブックマークしておくと便利です⇒「地金素材まとめデータベース」を見てみる

 

加工硬化による変化

もうひとつ「硬さ」には

「加工硬化」を考慮する必要があります。

 

「加工硬化」とは、地金を叩いたり、曲げたり、磨きヘラで擦ったりといった「加工」を加えると、

地金が締まって硬くなり、加工しにくくなる性質です。

 

この「加工」を連続して加えていくと、どんどん硬くなって、

亀裂が入ったり、割れたりして破壊します。

ジュエリーが持っている7つの魅力

叩くと地金が締まって硬くなる

 

また、地金は、焼き鈍した状態ではビッカース硬度がもっとも低い状態になり、加工を加えることによってビッカース硬度が高くなります。

 

加工硬化とビッカース硬度の関係

加工硬化とビッカース硬度の関係

 

 

下記の記事では、基本のシルバー甲丸リングの作り方をご紹介しています。”加工”についてあわせてご覧ください。⇒「基本のシルバー甲丸リングの作り方【動画解説あり】」を見てみる

 

純度によって変わる性質

地金は、

純度が上がるほど粘りが出て、割れにくくなるいっぽうで柔らかくなります。

 

逆に、合金となって純度が下がるほど、

硬くなりますが脆さも加わり、割れやすくなります。

 

この性質も理解しておきましょう。

貴金属の純度と粘りの関係

貴金属の純度と粘りの関係

 

「硬さ(ビッカース硬度)」まとめ

今回は、貴金属の「硬さ」について解説いたしました。

 

貴金属の硬さは「ビッカース硬度」によって示す事ができ、

数値が高いほど硬いということを表しています。

 

また、地金の純度が上がると粘りが出て柔らかくなり、逆に純度が下がると硬くなりますが割れやすくなります。

 

〇展性について
地金が破壊されずに、板のように広げられる性質
〇延性について
地金が破壊されずに、線のように伸ばされる性質
〇ビッカース硬度
金属の硬さを表す尺度。数値が高いほど硬度が高い
〇純度と硬さについて
純度が上がると粘りが出て柔らかくなり、逆に純度が下がると硬くなって脆さも加わわる

 

この記事を参考に、貴金属の特性について理解を深めていただければ幸いです。

 

下記ページは、初心者~中級者に向けた「ジュエリー制作のロードマップ」です。どこから始めたらいいかわからない方はぜひチェックしてみて下さい。⇒「ジュエリー制作のロードマップ」を見てみる

 

シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」

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