シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」第3回「融点とろう付け」

シルバーリングのろう付け作業 地金素材

記事内の外部リンクには広告が含まれています

ブックマークする
ログインしてくださいClose
この記事には、印刷用に最適化されたPDF資料があります。

 

シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」では、ジュエリー制作に必要な貴金属の特性を勉強していきます。

全5回をご覧頂くと、より貴金属の魅力を知る事ができますので、ぜひ最後までご覧下さい。

 

シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」

前回の記事「融点と地金の溶解」では、

・貴金属の融点について
・地金の溶解について

について解説致しました。

 

第3回の今回は、

「融点とろう付け」について解説致します。

 

作品を作るうえで「ろう付け」は欠かせない技術です。

特に貴金属は、

その素材によっても注意すべき点が異なります。

 

そこで今回は、「ろう付け」について詳しく解説してまいりますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

ジュエリー制作に欠かせない「バーナーの種類」について、下記の記事で初心者向けにわかりやすく解説していますのであわせてご覧ください。⇒「初心者向け!ロウ付けに必要なバーナーのおすすめは?【動画解説あり】」を見てみる

 

ろう付けとは

金属同士をくっつける際、接着剤では強度が足りませんので、

「溶接(ようせつ)」

を行います。

 

「溶接」には、大きく分けて3種類の方法があります。

○融接(ゆうせつ)
⇒ アーク溶接、レーザー溶接等

○圧接(あっせつ)
⇒ ガス圧接、摩擦圧接等

○ろう接(ろうせつ)
⇒ ろう付け(ろう付け)

 

その中の一つが「ろう付け(ろう接)」となります。

 

下記の記事では、溶接の種類やろう付けの基本について詳しく解説していますので合わせてご覧下さい。⇒「ろう付けとは?溶接やろう接の基本と実際のやり方について」を見てみる

 

母材を溶かさない

「ろう付け(ろう接)」は、

溶接する材料(母材)を溶かさずに、溶加材(ようかざい=ろう)を接着剤として接合する方法です。

 

溶加材が接着剤のような役割をしている、と考えると理解しやすいと思います。

 

母材を溶かす事なく溶接できますので、仕上がりが綺麗というメリットがあります。

 

また、異なる金属同士(銀と真鍮、金とプラチナ等)を溶接できるのも、ろう付けの特徴です。

 

貴金属ごとに異なる特徴

ろう付けは、加工する上で重要なポイントになりますが、ろう付けの作業で、

温度を高くしすぎると地金を溶かしてしまう事があります。

 

通常、 シルバーとゴールドはガスバーナー(プロパンガス)で作業を行い、プラチナは酸素バーナーでろう付け作業をします。

 

ガスバーナーの炎の温度は、

ハンドバーナーでも約1300℃位あります。

 

酸素バーナーは、

約2500℃位の高い温度になります。

 

ろう付けにおいては、貴金属毎に異なる融点の範囲内でろう付け作業をすることが絶対の条件で、

ろうが溶ける温度より高く上げ過ぎてはいけません。

 

そのため、ろう付けの時は地金を溶かさないよう、温度の調節を行いながら作業します。

 

貴金属毎に見るろう付けの注意度
貴金属 注意度
シルバー 溶かさないよう、特に注意する
ゴールド 場合によって注意する
プラチナ 比較的安心してろう付けできる

 

貴金属の融点については、前回の記事「融点と地金の溶解」をご覧ください。⇒「貴金属の特性を学ぶ”融点と地金の溶解”」を見てみる

 

熱伝導率について

熱伝導率は、物質に熱を加えた際に、

どれだけその熱を伝えることができるかどうかを表したものです。

 

例えば、冬の寒い日に金属の手すりを触った時はとても冷たく感じると思います。

それは、金属の熱伝導率が高いため、あなたの手の熱をすぐに吸い取ってしまったからです。

 

一方で、木製の手すりを触った時は金属ほど冷たく感じません。

それは木の熱伝導率が低いため、あなたの手の熱をあまり吸い取らないからです。

 

つまり、

物質の熱伝導率が高ければ高いほど、その物質は熱を早く伝えることができるという事です。

 

逆に、熱伝導率が低ければ低いほど、その物質は熱を遅く伝えます。

○熱伝導率が高い(大きい)
 ⇒ 熱が伝わりやすい

○熱伝導率が低い(小さい)
 ⇒ 熱が伝わりにくい

 

貴金属の熱伝導率

一般に金属は、熱伝導率が高い固体として知られています。

 

これを貴金属で見てみると、シルバーの熱伝導率が最も高く金属の中で一番、熱の伝わりが高い金属になります。

 

次いでゴールド、最も熱伝導率が低いのがプラチナです。

 

貴金属の熱伝導率
貴金属 熱伝導率
シルバー 最も高い
ゴールド 次に高い
プラチナ 最も低い

 

ろう付けとの関係

ジュエリーの手作り加工では、ろう付けしながら各パーツを組み立てていきますが、 ろう付け個所の数
が同じなら熱伝導率の低いプラチナが一番作業しやすいという事になります。

 

そして、シルバーのろう付けが最も難しくなります。

 

シルバーは”熱伝導率が高い”ため、ろう付けしたい箇所に炎をあてても、熱が他の場所にすぐ伝わるため”ろう付けできる作業温度になかなか達しない”という現象が起こるからです。

シルバーリングのろう付け作業

シルバーリングのろう付け作業

 

逆に、熱伝導率の低いプラチナは作業が楽で、 ろう付けしたい箇所だけを集中して熱することができます。

 

下記の記事では、彫金の溶接に必要なろうの種類について解説していますのであわせてご覧ください。⇒「彫金の溶接に必要なろうの種類」について見てみる

 

共付けについて

熱伝導率の低い金属の特性を活かして、ろう材を使用せずに、貴金属どうしを溶接する方法を “共付け”と言います。

 

接合面の貴金属を直接溶かして溶接する方法で、

特にプラチナリングの腕部分 (アーム)を接合する時などに行うことがあります。

また、加工中に地金にヒビが入った時などにその部分だけを溶かして修復することがあります。

プラチナの共付け作業

プラチナの共付け作業

 

この方法は、熱伝導率の低いプラチナは比較的作業しやすいのですが、熱伝導率の高いシルバーは難しく共付けを行うのは困難です。

 

共付けや部分溶かしの難易度
貴金属 共付けの難易度
シルバー 難しい
ゴールド ふつう
プラチナ 比較的簡単

 

 

下記の記事では、シルバーを例に「ろう付けのコツ」についてご紹介していますのであわせてご覧ください。⇒「シルバー指輪のろう付けのコツ【動画解説あり】」を見てみる

 

「融点とろう付け」まとめ

今回は、ジュエリー制作における「融点とろう付け」について解説いたしました。

 

ろう付けは、金属同士を接合する際に欠かせない技術で、特に貴金属の取り扱いには注意が必要です。

今回の要点をまとめると、次のようになります。

○ろう付けの基本
母材を溶かさずに”ろう材”を用いて接合する方法で、異なる金属同士も溶接可能。
○貴金属ごとの特性
シルバーとゴールドはガスバーナーで、プラチナは酸素バーナーで作業を行う。
○熱伝導率の違い
シルバーの熱伝導率が最も高く、次いでゴールド、プラチナが最も低い。
○ろう付けと熱伝導率
熱伝導率が高いシルバーのろう付けは難しく、熱伝導率が低いプラチナは作業しやすい。
○共付けについて
ろう材を使用せずに、貴金属どうしを溶接する方法で、プラチナは比較的作業しやすいが、シルバーは困難。

 

ジュエリー制作におけるろう付けは、素材の特性を理解し、適切な方法で取り組むことが大切です。

今回の記事を参考に、より良い作品作りに取り組んでみてください。

 

下記ページは、初心者~中級者に向けた「ジュエリー制作のロードマップ」です。どこから始めたらいいかわからない方はぜひチェックしてみて下さい。⇒「ジュエリー制作のロードマップ」を見てみる

 

シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」

シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」では、ジュエリー制作に必要な貴金属の特性を勉強していきます。

全5回をご覧頂くと、より貴金属の魅力を知る事ができますので、ぜひ最後までご覧下さい。

 

参考文献

閲覧履歴

地金素材

シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」第3回「融点とろう付け」

シリーズ「貴金属の特性を学ぶ」 前回の記事「融点と地金の溶解」では、 ・貴金属の融点について ・地金の溶解について について解説致しました。 第3回の今回は、 「融点とろう付け」について解説致します。 作品を作るうえで「ろう付け」は欠かせな...
新規登録
ログイン
[PR]ピアスや空枠など貴金属パーツはコチラ