「タガネ(鏨)」は、日本のジュエリー制作において欠かせない工具です。
しかし、市販されているタガネは、案外使いにくいのと、欲しい形のタガネがなかったりするため、職人さんはタガネを自作します。
タガネの用途は多岐に渡り、彫金(彫り)や、彫り留め、石留めやテクスチャーなどありますが、必要な時に、すぐ作れるようにしておきたいものです。
具体的な作り方については、順次ご紹介していまいりますが、この記事では、タガネの種類と用途について解説してまいります。
↓タガネづくりのイメージ
下記の記事では、ジュエリー制作に必要な「石留めの種類37種」と、その留め方の概要についてまとめましたので合わせてご覧下さい。⇒「【全37種】石留めの種類と技法」を見てみる
タガネの材料
タガネの材料は「株(かぶ)」と言われ、彫金工具店で購入可能です。
タガネの株には、打出し用の太い「だしタガネ株」と、彫り・彫り留め用の細い「彫りタガネ株」の2種類があります。
また、「彫りタガネ株」には、
・赤タガネ
・青タガネ
・超硬タガネ
があります。
赤タガネ
一番加工しやすいタガネが「赤タガネ」です。
赤タガネの材質は「炭素鋼」で、鉄に炭素が含まれています。
青タガネ
青タガネは「ハイスタガネ」ともいわれます。
ハイスとは「高速度鋼(ハイスピードスチール)」の略で、ヤスリでは加工できないため、グラインダーで削って成形し、砥石で仕上げます。
超硬タガネ
青タガネよりも固いのが「超硬(ちょうこう)タガネ」です。
加工せずにそのまま使用できますが、中には砥ぎ直してから使用する職人さんもいます。
超硬片切りタガネ
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超硬毛彫りタガネ
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ロット棒
断面が真円のロット棒は、魚子(ナナコ)タガネやポンチタガネなどを制作する場合に多く使用されます。
ロット棒も彫金工具店で購入できます。
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だしタガネ
打出し用の太い「だしタガネ」
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タガネの形状と大きさ
市販されているタガネ株には、「面(※)」と「片切り(※)」があります。
“面”が、正方形に対して、片切りは、断面が”長方形”の形をしています。
また、「彫りタガネ株」には、全長8cm位から12cmくらいまで5種類ほどあり、小さい方から順に、1号・2号・3号・4号・5号があります。
彫りや彫り留めには、2号か3号が多く使われるようです。
タガネを作る道具
タガネを作ったり、キサゲを研いだりするときに必要な砥石と砥ぎ機をご紹介します。
砥石
○インディア砥石
タガネやキサゲなど、荒研ぎ用の砥石です。
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○アーカンサス砥石(アルカンサス砥石)
アメリカのアーカンサス地方で産出される天然石を使用した良質な砥石です。
オイルをつけて使用します。
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砥ぎ機
超硬タガネ、キサゲの鋭利な刃付けに、能率良く確実な刃先研磨ができ、粗目(800番)と仕上目(1500番)と、ダイヤモンドホイールを素早く交換することができる砥ぎ機です。
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タガネの磨き
タガネの磨きに、青棒をすり板などに擦りつけて使用します。
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下記のページでは、タガネを作るのに必要な工具を一覧でまとめてありますので合わせてご覧下さい。⇒「彫りや彫り留めに必要な工具」を見てみる
タガネの種類と用途
タガネには大きく分けて
・切るタガネ
・打つタガネ
の2種類に分類する事ができます。
↓打つタガネを用いた彫り留めのイメージ
ここからは、「切るタガネ」「打つタガネ」について、図解を交えて解説してまいります。
ブックマークしておくと、いつでも見返す事ができて便利です。
切るタガネ
切るタガネは、主に「彫金」や「彫り留め」に使用されます。
切るタガネの主な種類は次の通りです。
・毛彫りタガネ(けぼり)
・片切りタガネ(かたぎりorかたきり)
・甲すくいタガネ(こうすくい)
毛彫りタガネ
文字通り「毛」のような細い繊細な線が彫れるタガネが「毛彫りタガネ」です。
地金を彫るための、最も基本的なタガネとなり、直線用と曲線用の2種類があります。
片切りタガネ
刃の片方の角で彫るのが「片切りタガネ」です。
毛彫りタガネ同様、基本的なタガネとなり、直線用と曲線用の2種類があります。
甲すくいタガネ
毛彫りタガネを変形させたのが「甲すくいタガネ」です。
石留めに使われる事はほとんどなく、毛彫り・片切りの基本タガネの補助的なタガネとして、主に地金を彫る際に用いられます。
打つタガネ
打つタガネは、打ち出し以外では、フクリン留めや伏せ込み、テクスチャーを施すために多く使用されます。
・ポンチタガネ
・ミルタガネ
・魚子タガネ(ななこ)
・梨地タガネ(なしじ)
・溝タガネ(みぞ)
・平タガネ(ひら)
・割りタガネ(わり)
ポンチタガネ
石留めの前工程として、下穴の位置ぎめやポンチ留めに使用したり、魚子タガネやミルタガネを作るときに使用します。
ミルタガネ
ミル打ち(指輪の縁に施してある細かい点)に使用するのが「ミルタガネ」です。
魚子タガネ
先端が丸く窪んだタガネです。
打った跡が、魚の卵のように栗(あわ)立って見えるところから、魚子という名称になったと言われています。
梨地タガネ
打った表面が、梨の皮を連想させる、梨地仕上げ用のタガネです。
溝タガネ
割りタガネと同様に、主に一文字留めに使用するタガネです。
平タガネ
立爪(たてづめ) 角爪 (かくづめ)、 色石枠などの爪留めや、 ふせこみなどの石留めに使うタガネで、石留めタガネともいいます。
上面が、真っ平である事が大切で、断面は長方形や正方形など、場面に合わせて使用します。
割りタガネ
主に一文字留めや連マス留めに使用されるのが、割りタガネです。
片切りタガネを変形させた形状で、地金を切り割って、爪の大まかな形を作るときに使うタガネになります。
「タガネ(鏨)」の種類まとめ
今回は、彫金や石留めに必要な「タガネ(鏨)」の種類について解説致しました。
具体的な作り方については、順次ご紹介していまいりますが、この記事をブックマークしておいて、いつでも自分のタガネを作れるようにしておきましょう。
下記の記事では「平タガネ」の作り方について、動画を交えてご紹介していますので合わせてご覧下さい。⇒「タガネの作り方!平タガネ製作編【動画解説あり】」を見てみる