貴金属の、金・プラチナ・シルバーには純度によって様々な素材がありますが、
一般消費者には見分けがつかないものです。
そこで、貴金属を素材としたジュエリーやアクセサリーには
「刻印(ホールマーク)」が打刻されます。
今回は、「刻印(ホールマーク)」を打たなければいけない理由と、日本における刻印の種類、外国の製品に見られるホールマークとその制度についてご紹介致します。
貴金属以外にも刻印を打ちますが、中には紛らわしい刻印が多く存在します。下記の記事では、刻印からメッキ品や張り製品を見分ける方法について解説していますので合わせてご覧ください⇒「金とメッキ品や張り製品の見分け方!ジュエリー制作における刻印と貴金属」を見てみる
刻印を打つ理由
すべてのジュエリーには品位表示、 いわゆる「金性(きんしょう)」の刻印が打刻してあります。
刻印(ホールマーク)は、貴金属製品の純度や品質を示すもので、製品に関する情報だけでなく、偽物によるトラブルを防いで、消費者を保護する役割があります。
なぜなら、見た目が「金色」であっても、純金なのか14金なのか、
一般消費者には判別ができないからです。
そのことを悪用して、金の純度をごまかして偽物を販売する業者も存在し、トラブルとなるケースも少なくありません。
そのような粗悪品の流通を防止するためにも、
刻印は重要な役割を持っています。
特にヨーロッパには「ホールマーク制度」があり、その制度に基づいてホールマークを打刻する事が義務付けられています。
まずは、日本も含め、世界の「ホールマーク制度」について見ていきましょう。
下記の記事では、「貴金属」について詳しく解説していますのであわせてご覧ください。⇒「貴金属とは?シルバー・ゴールド・プラチナ・白金族について知る!」を見てみる
各国のホールマーク
ここでは、ヨーロッパをはじめとした各国のホールマーク制度についてご紹介致します。
イギリスのホールマーク
イギリスは、品位証明の発祥の国で、13世紀からホールマーク制度が存在しています。
貴金属製品には、純度を示すホールマークを打刻することが義務付けられています。
1975年には、品位証明の範囲が広がって、プラチナ (950) も含むようになりました。
イギリスでホールマークを管理のは「アッセイオフィス (Assay Offices)」という公的機関です。
歴史的な背景を持つ、4つのアッセイオフィスが存在しており、各オフィスが独自のマークを持っているため、どのオフィスで打刻されたかを識別することができます。
<イギリスのアッセイオフィス>
・ロンドンアッセイオフィス
・バーミンガムアッセイオフィス
・シェフィールドアッセイオフィス
・エディンバラアッセイオフィス
<各マークが持つ意味>
① スポンサー・マーク
製造会社のアルファベットが入ります。各会社ごとに定められていて、どこの製品かわかります。② スタンダード・マーク
貴金属の種類と品位を表します。この場合、ライオンがシルバーを表し、925が純度(92.5%)を示します。③アッセイ・オフィス・マーク
分析所を表し、この場合はロンドンであることをレオパード・マークで示します。④ デートレター・マーク
年号を表します。この場合は「X」で1997年を示しています。
フランスのホールマーク
フランスでは、1798年にのホールマーク制度が始まりました。
素材ごとにマークが決められており、
プラチナ (950以上)は「犬の顔のマーク」
ゴールド (K22、K20、K18以上)は「鷲のマーク」
シルバ(925以上、800) は「蟹のマーク」となります。
イタリアのホールマーク
イタリアのホールマーク制度が実施されたのは1968年からで、各メーカーは、自社の番号を各地の商工会議所からもらい(業者番号)、地域を表すアルファベットと共に、星印の後に打刻します。
ドイツのホールマーク
ドイツでは、1884年に、ゴールド及びシルバーについて「金・銀製品の品位に関する法律」が制定されました。
プラチナについての法律は無いようです。
スイスのホールマーク
スイスでは、1933年、「貴金属及び貴金属製品取引管理に関する連邦法」が制定されました。
アメリカのホールマーク
アメリカでは、1938年に、「プラチナまたはプラチナ使用製品のマーク法」が制定されました。
また、アメリカには銀食器も多く、シルバーアクセサリーも含め、銀製品には「STERLING(シルバー925)」の刻印があるものがほとんどです。
日本のホールマーク
日本では、イギリスやフランスとは違って、法的な規制がない任意制度となっています。
日本における、品位刻印の表示方法としては、次の2通りの方法があります。
- 自分が打刻するケース
- 造幣局が打つ国家検定の刻印
1.自分が打刻するケース
ひとつ目は、私たちが普段行っているように、自分が打刻するケースです。
品位刻印は「性(しょう)刻印」とも呼ばれ、工具店で販売されています。
刻印には、大きく分けて、次の2つがあります。
直刻印
「直(ちょく)刻印」は、主にフラットな面に打刻する目的で使用します。
ペンダント裏面や、展開した状態の指輪内側などが適しています。
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曲がり刻印
「曲がり刻印」は、主に指輪の内側などカーブしたところに打刻する目的で使用します。
カーブ面に合わせて、刻印も緩やかにカーブしているのが特徴です。
深さが2種類ありますので、指輪の幅に合わせて選択します。
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2.造幣局が打つ国家検定の刻印
ふたつめは、造幣局が打つ国家検定の刻印で、1929年(昭和4年)から行われています。
この刻印は、一般的に民間で打刻されている刻印と区別して
・純分認証極印(じゅんぶんにんしょうごくいん)
・ホールマーク (hall mark)
・造幣局検定マーク
・政府証明マーク
などの名前でも呼ばれています。
この制度は、造幣局が行う貴金属の品位制度(貴金属製品品位証明制度)ではありますが、市場に出回っているジュエリーの約20%程度と言われており、この検定を受けていない商品もたくさんあります。
貴金属製品の品位区分と証明記号
主な刻印の種類と得られる情報
造幣局が打つ国家検定の刻印を利用せず、私たちが任意で打刻するケースにおいて、その刻印を打つ目的と得られる情報について解説致します。
指輪やネックレスなどに打刻する刻印には、次の3種類があります。
- 品位(金性)を表す刻印
- 宝石について表わす刻印
- ブランドやメーカーの刻印
品位(金性)を表す刻印
金・プラチナ・シルバーの素材刻印で、品位(金性)を表す刻印が打刻されます。
この刻印から、素材と品位(金性)を判別する事ができます。
金製品に打刻する刻印
金は、1000分率かカラット表示(K18やK14)のいずれかで打刻されます。
1000分率 | カラット表示 |
---|---|
999 | K24 |
916 | K22 |
750 | K18 |
585 | K14 |
416 | K10 |
375 | K9 |
ホワイトゴールドの場合
ホワイトゴールドの場合、品位と合わせて「WG」が打刻されます。
プラチナの場合
プラチナについては1000分率にと合わせて「Pt]が打刻されます。
1000分率 |
---|
Pt999 |
Pt950 |
Pt900 |
Pt850 |
シルバーの場合
シルバーについては、1000分率表記、または1000分率と合わせて「SV」「SILVER」が打刻されます。
また、一般的に「SILVER」だけ打刻する場合も多くあります。
1000分率 | SV表記 | SILVER表記 |
---|---|---|
999 | SV999 | SILVER 999 |
950 | SV950 | SILVER 950 |
925 | SV925 | SILVER 925 |
900 | SV900 | SILVER 900 |
800 | SV800 | SILVER 800 |
宝石について表わす刻印
主に、ダイヤモンドやルビー・サファイヤ・エメラルドなどの貴石を使用している製品に打刻される事が多いのが「宝石に関する刻印」です。
アルファベットで宝石の種類を、石目(キャラ目)刻印では、数字で「ct(カラット)」を表します。
石目(キャラ目)刻印
「0.231」「0.01」などの数字は、ダイヤやルビーなどのカラット数(重さ)を表す刻印です。
中石と脇石がある指輪などの場合は、通常、中石の石目刻印と、脇石の石目刻印は分けて打刻されます。
アルファベット刻印
次のように、アルファベット1文字で打刻されている刻印は、ダイヤモンドやルビー・サファイヤ・エメラルドなどの貴石の頭文字を取ったものです。
通常は石目刻印と合わせて打刻されます。
複数の宝石を使用する場合には、「D 0.214 R 0.04」など、分けて打刻されます。
- 「D」 ダイヤモンドの頭文字(D 0.231 等)
- 「R」 ルビーの頭文字(R 0.231 等)
- 「E」 エメラルドの頭文字(E 0.231 等)
- 「S」 サファイアの頭文字(S 0.231 等)
ブランドやメーカーの刻印
ブランドやメーカーのロゴやマークなどの刻印は、自社商品である事を証明する刻印です。
保証書がなくても、刻印を見れば自社の製品かどうか判別できるようになります。
なお、ブランドやメーカーの刻印に、特に制約はありません。
下記の記事では刻印を上手に打つコツを動画と合わせて解説していますので合わせてご覧ください。⇒「素材刻印を上手に打つコツ【動画解説あり】」を見てみる
刻印は製品に対する責任の証
以上、今回は、刻印の種類と打つ理由、及び世界各国のホールマークについて解説致しました。
刻印は製品に対する責任の証であり、自身をもって製品を世の中に出す、という覚悟でもあります。
ブレずに真っ直ぐ、誰が見ても判別できるようにしっかりと刻印を打って作品を作ってまいりましょう。
下記ページは、初心者~中級者に向けた「ジュエリー制作のロードマップ」です。どこから始めたらいいかわからない方はぜひチェックしてみて下さい。⇒「ジュエリー制作のロードマップ」を見てみる