今でこそシルバーアクセサリーは広く普及していますが、
日本においてシルバーがジュエリーの仲間入りをしたのは1990年頃です。
欧米では、銀器の歴史があるため、古くから貴金属として扱われてきましたが、
その特徴ゆえに、日本ではジュエリーとしては扱われていませんでした。
今回は、シルバー素材について詳しく解説致します。
金は特に加熱処理の仕方を間違えると大変な事になります。焼鈍しと時効硬化・加工硬化についてまとめましたので合わせてご覧ください。⇒シルバーや18金の焼鈍しと時効硬化及び加工硬化について
銀の品位
金同様、純銀では柔らかすぎてジュエリーには向かないため、
通常は「銅」を加えて二元合金とします。
加える銅の割合によって、品位が異なります。
日本における、銀の品位は5品位制で、1000分率で表されます。
・950(95%が銀、5%が銅)
・925(92.5%が銀、7.5%が銅)
・900(90%が銀、10%が銅)
・800(80%が銀、20%が銅)
中でも、ジュエリーとして使用される素材は
「950」「925」が一般的です。
下記の記事では、金と金合金について詳しく解説していますので合わせてご覧ください。⇒「金と金合金によるジュエリー制作のゴールド素材」を見てみる
国によって異なる呼び名
加工に使用する950銀(95%が銀)の事を、日本では「5分落ちの銀」等とも言いますが、アメリカやヨーロッパでは、銀の純度によって呼び名が異なります。
ここでは、代表的なシルバーの呼び名をご紹介します。
◯BRITANNIA SILVER(ブリタニアシルバー)
銀95.84%、銅4.16%
◯STERLING SILVER(スターリングシルバー)
銀92.5%、銅7.5%
◯COIN SILVER(コインシルバー)
銀90.0%、銅10.0%
中でも、市場で販売されている輸入品のシルバージュエリーの多くは
「スターリングシルバー」が使用されており、刻印を見てみると
「STERLING」と打刻されている場合があります。
下記の記事では、素材刻印の上手な打ち方について詳しく解説していますので合わせてご覧ください。⇒「素材刻印を上手に打つコツ【動画解説あり】」を見てみる
銀の性質
ここでは、銀の性質について詳しく解説したいと思います。
熱と電気の伝導性が高い
全ての金属の中で、熱と電気の伝導性が最も高いのが銀です。
熱いコーヒーに銀のスプーンを入れると、びっくりするほど熱く感じられるほどです。
熱の伝導性が高いという事は、1ヶ所に炎を当てても、
その部分の温度だけが上がるわけではなく、周囲に熱が回っていく事を意味します。
ろう付けする際に、周囲から温めるようにするのはこのためです。
容易に化学反応を起こす
銀は、空気中の硫化水素や二酸化硫黄と反応して、黒ずんだり、輝きが失われていきます。
これは、銀と空気中の成分が化学反応を起こしたためです。
たまに、「銀が酸化した」と聞きますが、鉄さびのような酸化ではなく
「硫化(りゅうか)」だという事を認識しておきましょう。
また、シルバーは塩素系漂白剤などでも黒く変色します。
これは、シルバーの「塩化」による化学反応です。
なお、銀は、硝酸や濃硫酸に溶ける性質があります。
メッキされる事が多い
銀は、プラチナと同じような白く美しい光沢を放つ貴金属です。
しかし、先ほど説明したように、容易に化学反応を起こしてしまう為、
メッキを施されて市場に出回る事が多い素材です。
特に日本ではロジウムメッキを施される場合が多く、私達がお店で見るシルバーの色は「ロジウムメッキの色」というケースが多々あります。
また、ブライダルリングのサンプル品としても多く利用されています。
金銀・プラチナ、真鍮や銅、鉄も含めて、ジュエリー制作にかかわる地金素材の比重や融点・成分などをまとめました。ブックマークしておくと便利です⇒「地金素材まとめデータベース」を見てみる
加工における注意点
扱いやすいシルバーですが、加工する際に気を付けるべきことが2つあります。
ここでは、シルバー素材を用いて加工する際の注意点について解説しています。
ろう付け
シルバーは熱伝導率の高い金属です。
ろう付けする際には、直接ろう材に火を当てずに、周囲を温めるようにして加熱していく事が、シルバーのろう付けを成功させるコツです。
下記の記事ではろう付けの基本について詳しく解説していますので合わせてご覧下さい。⇒溶接やろう接の基本と実際のやり方を詳しく見る
火ムラの問題
磨くほどに白く輝くシルバーですが、頭の痛い問題として「火ムラ」があります。
シルバーは銀と銅の二元合金ですが、熱処理によって酸化銅ができ、深く浸透した部分と浅い部分に分かれます。
酸洗いした直後はわかりませんが、磨くと深く浸透した部分が「火ムラ」となって現れます。
製材された製品も、鋳造品も、火ムラは起こり得るため、シルバーに火ムラはつきものです。
下記の記事では、シルバーの火ムラ対策と対処の仕方について詳しく解説していますので合わせてご覧下さい。⇒シルバーの火ムラ対策と対処の仕方について詳しく見る
シルバーの特徴と銀の品位まとめ
今回は、シルバーの特徴と銀の品位、加工時の注意点についても合わせて解説致しました。
日本全国のジュエリースクールや彫金教室を見ても、素材にシルバーを使っている所が多いと思います。
シルバーの特徴を理解した上で、作品作りを楽しみましょう。
下記の記事では、デザインによって異なるジュエリーの仕上げ工程について、その手順を解説していますのでご覧下さい。⇒「デザインによって異なるジュエリーの仕上げ工程」を見てみる