シリーズ「指輪の基本」では、指輪の基本的なデザインとその種類について紹介していきます。
全4回をご覧頂くと、より指輪に対する理解が深まりますで、ぜひ最後までご覧下さい。
第3回「用途やニーズによるデザイン分類」
日本の指輪は、和装文化を背景に、世界でも特別な位置を持っており、指輪ほど奥深く、種類が豊富なジュエリーはありません。
そこで、このサイトでは、日本の指輪にフォーカスして、その基本的なスタイルやデザインをご紹介してまいります。
いろんな分類の方法があると思いますが、
- 素材やデザインによる分類
- 用途やニーズによる分類
の2つの分類にわけ、記事を2回にわけてお伝えしています。
前回の記事では「地金と宝石による分類」として、全27種類の基本的な構造とデザインをご紹介致しました。
今回は、私たちが指輪を使用する用途や、ニーズによって分類し、その種類をご紹介してまいります。
人生の節目としての記念や、思い出に関する指輪、お守りや縁起ものに関連した指輪、また、つける指によっても指輪の名称は変わります。
指輪を、製品として企画する際にも、役立つ内容になりますので、ぜひ最後まで記事をご覧ください。
下記の記事では、日本のジュエリー文化における「指輪」の基本的な構造について、詳しく解説していますので合わせてご覧下さい。⇒「指輪の基本構造と各部名称」を見てみる
ブライダルリング
結婚指輪を、お互いに交換するようになった歴史は古く、9世紀にまで遡ります。
当時のローマ教皇「ニコラウス1世」の時代、花嫁には金の指輪、花婿には鉄の指輪を、お互いに交換したとされています。
この伝統が、少しずつ「結婚指輪の交換」という形で広まり、13世紀には、今と同じように、指輪の交換を行う事が一般的となりました。
ブライダルリングには、
・結婚指輪(マリッジリング)
・婚約指輪(エンゲージリング)
があり、いずれも、左手の薬指につけるリングとなります。
結婚指輪(マリッジリング)
「結婚指輪(マリッジリング)」は、結婚式や入籍の時に、お互いに取り交わす指輪の事で、「ウエディング・リング」とも呼ばれています。
肌身離さず、常に身につける指輪のため、甲丸リングや平打ちリングなど、シンプルなデザインが多く、素材は、プラチナが一般的となっています。 (欧米では、ゴールドが一般的)
結婚指輪の代表的なデザイン
甲丸リング
「結婚指輪(マリッジリング) 」として用いられる事が多いのが「甲丸(こうまる)リング」です。
甲丸の形状には、指輪の断面が、ほぼ半円状のものと、やや平らな形状の「平甲丸(ひらこうまる)」と呼ばれるデザインがあります。
下記の記事では、シルバーで甲丸リングを作る過程を動画を交えて解説していますので合わせてご覧下さい。⇒「基本のシルバー甲丸リングの作り方【動画解説あり】」を見てみる
平打リング
「平打(ひらうち)リング」も、甲丸リング同様、明治時代からある伝統的なデザインです。
甲丸リングと同じように、「結婚指輪(マリッジリング) 」として利用されてきました。
なお、平打リングのように、指輪の全周の幅が同じものを「バンドタイプ」ともいいます。
鎬リング
平打リングの角を落とし、指輪の断面が台形のような形になるのが「鎬(しのぎ)リング」です。
「鎬(しのぎ)」とは、日本刀の刀と峰の間の部分(鎬)の形に似ていることに由来しています。
カット・リング
主にマシンメイド(工作機械)で製造される事が多いのが、「カット・リング」です。
甲丸や平打といったのシンプルな指輪の表面に、工作機械で幾何学的な模様パターンを彫ったデザインで、古くから人気があります。
下記の記事では、マシンメイドの現場を見学した際の様子を紹介していますので合わせてご覧下さい。⇒「機械に宿る職人の思い、マシンメイド・ジュエリー工房レポート」を見てみる
婚約指輪(エンゲージリング)
「婚約指輪(エンゲージリング)」は、2人が婚約した際の「証」としての指輪になります。
一般的には、プロポーズの時に、男性から女性に贈る指輪とされています。
以前は、立爪のダイヤモンドリングが主流でしたが、最近は、普段使いしやすいよう、カジュアルなデザインの指輪を選ぶ人も増えています。
婚約指輪の代表的なデザイン
立爪リング
「ティファニーリング」として有名なのな「立爪リング」です。
ダイヤモンド特有の美しさが、最大限に活かされるデザインとして考案されたシンプ ルなフォルムは、装飾を施すだけがデザインではないということを教えてくれています。
ソリテール(ソリティア)
石が1つだけ留められたソリテールリングのデザインの指輪が「一本腕リング」です。
「ストレート」とも呼ばれ、シンプルで仕事中やプライベートなど、シーンを選ばず身につける事ができます。
また、石に向かって腕が細くなっている指輪は「しぼり腕」と呼ばれ、石が大きく強調されて見える効果があります。
抱き合わせ腕
宝石を抱えているような印象のデザインが「抱き合わせ腕」のリングです。
リング腕が、緩やかなカーブを描き、一個石のソリテールリングの定番デザインとして多く利用されています。
ひねり腕
「抱き合わせ腕」と似ていますが、ひねる方向が石の外側に向かっているのが特徴的なデザインです。
「抱き合わせ腕」が、ややカジュアルな印象に対して、「ひねり腕」は、少しシックでフォーマルな印象になります。
割腕リング
幅のあるリングの中心を2つに割り、そこに宝石を留めたデザインの指輪が「割腕リング」です。
幅が広くなる分、大きな石が留められますので、華やかな印象を与えてくれます。
アニバーサリー
人生の節目節目に送られる指輪があります。
ここでは、そんな「記念の指輪」として、
- エタニティリング
- ベビーリング
- カレッジリング
をご紹介します。
エタニティリング
結婚記念日や出産の記念に送られる指輪が「エタニティリング」です。
指輪一周、途切れる事なく、メレダイヤモンドを留めたものが 「フルエタニティリング」、指輪の半周だけ留めた指輪が「ハーフエタニティリング」です。
「フルエタニティリング」は、サイズ直しが出来ませんが、「ハーフエタニティリング」は、サイズ直し部分を確保するだけでなく、コストも抑える事ができるメリットがあります。
ベビーリング
結婚して生まれた赤ちゃんが、健康に育つよう、願いを込めて贈られるのが「ベビーリング」です。
子供が生まれた記念に、祖父母や父母から子供に贈られるのが一般的で、赤ちゃんの指に合わせて作る場合と、予め、固定のサイズでデザインされたベビーリングを購入する場合とあります。
赤ちゃん向けの指輪のため、1号以下と、極端にサイズが小さいのが特徴です。
実際に、赤ちゃんが身につける訳ではなく、ベビーリングをペンダントとして、チェーンを通して、ネックレスとして用いる場合も多くあります。
カレッジリング
「カレッジリング」は、大学の校章やシンボルなどが入った指輪で、「スクールリン
グ」とも言います。
同じ学校に通っている学生達が身につける指輪で、入学や卒業の記念として用いられることが一般的です。
また、学校に関連した指輪として、級友同士で身につける 「クラス・リング」もあります。
昔から云われのある指輪
指輪の中には、特別な思いや役割を持たせたリングも存在します。
ここでは、「昔から云われのある指輪」として、
- ポージーリング
- シグネットリング
- リガードリング
をご紹介します。
ポージーリング
「ポージーリング(Posy Ring)」は、指輪の表面や内側に、詩や短い字句を彫刻した指輪です。
「ポージーリング」の歴史も古く、13世紀から18世紀の終わりまで、ヨーロッパで広く流行し
た指輪で、日本では、1990年代前後から、プラチナのポージーリングが流行しました。
主にカップルで利用される事が多く、誕生日やクリスマス、ホワイトデー、2人の特別な記念日などに、相手へのプレゼントとして贈られます。
シグネットリング
「印台リング」として親しまれている「シグネットリング(Signet Ring)」は、シンボルやイニシャル、家紋、紋章などの彫りやエンボスが施された指輪のことを指します。
中世ヨーロッパにおいて「シグネットリング」は、重要な書類や手紙の”封をする際の封蝋”に、その彫りが施された部分を押し付け、自分の印として使用されました。
この用途から、シグネットリングは認証や権威の証、地位を示す象徴としての役割も持っており、貴族や王族がよくつけていた指輪です。
リガードリング
「リガード・リング(Regard Ring)」は、19世紀のヴィクトリア時代のイギリスで特に人気だった、宝石を使用した指輪で、宝石の組み合わせから名前が付けられています。
リガード・リングの特徴は、指輪にセットされている宝石が、「「REGARD(尊重)」という言葉の頭文字に対応するものであることです。
具体的な宝石の組み合わせは次の通り。
・Ruby(ルビー)
・Emerald(エメラルド)
・Garnet(ガーネット)
・Amethyst(アメジスト)
・Ruby(ルビー)
・Diamond(ダイヤモンド)
言葉遊びによって、愛情や感謝の気持ちを表現するためのロマンティックな贈り物として、ヴィクトリア時代に流行しました。
その他にも、宝石の頭文字を取って様々なメッセージを持った「アクロスティックジュエリー」として人気で、リガード・リングは、その代表例となります。
アクロスティックジュエリーについては、下記の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧下さい。⇒「【アクロスティックジュエリー】宝石アルファベット26文字の辞典!」を見てみる
お守りや縁起物としての指輪
古来から指輪は、「災いから身を守り、幸運を呼び寄せる」とされてきました。
そのため、今日の指輪には「お守りや縁起物」として利用される場合も多くなっています。
ここでは、お守りや縁起物としての指輪についてご紹介してまいります。
誕生石リング
各月ごとに選ばれた宝石を、セットした指輪が「誕生石リング」です。
宝石には、「災いから身を守り、幸せをもたらす」と信じられているものが多く、誕生石は、色や象徴によって相当する宝石を、12ヵ月にあてがったものです。
誕生石を身につける習慣は、18世紀頃、ユダヤ人の間で始まったとされています。
月ごとの誕生石は国によって異なり、1912年にアメリカの宝石業者によって定められたのを基準に、各
国の特徴を加味して制定されています。
日本では、「一般社団法人日本ジュエリー協会」が主体となって、月ごとの誕生石を設定しています。
誕生石一覧表
月 | 誕生石 |
---|---|
1月 | ガーネット |
2月 | アメシスト, クリソベリル・キャッツ・アイ |
3月 | アクアマリン, サンゴ, ブラッドストーン, アイオライト |
4月 | ダイヤモンド, モルガナイト |
5月 | エメラルド, ジェイダイト(ヒスイ) |
6月 | 真珠, ムーンストーン, アレキサンドライト |
7月 | ルビー, スフェーン |
8月 | ぺリドット, サードオニックス, スピネル |
9月 | サファイア, クンツァイト |
10月 | オパール, トルマリン |
11月 | トパーズ, シトリン |
12月 | トルコ石, ラピス・ラズリ, タンザナイト, ジルコン |
誕生石については、下記のページでまとめてありますので、合わせてご覧下さい。⇒「誕生石一覧表」を見てみる
星座石リング
誕生石と合わせて「お守り」や「縁起物」とされているのが「星座石」です。
主に、占星術を由来として、自分の星座を守護する宝石(守護石)が、指輪にセットされています。
誕生石リング同様、お守りのような存在として、災難から守り、願いが叶うという言い伝えがあります。
星座石一覧表
牡羊座 | ルビー、ガーネット、カーネリアン |
---|---|
牡牛座 | エメラルド、ジェード、マラカイト、ペリドット |
双子座 | トパーズ、シトリン、アゲート |
かに座 | パール、ムーンストーン、アクアマリン |
しし座 | ルビー、トパーズ、琥珀、カーネリアン |
乙女座 | トパーズ、シトリン |
天秤座 | オパール、エメラルド、ジェード、マラカイト |
蠍座 | ルビー、ガーネット、カーネリアン |
いて座 | アメジスト、スギライト、ラピスラズリ |
やぎ座 | ガーネット、ターコイズ、アメジスト |
水瓶座 | サファイヤ、アメジスト、オパール、オニキス |
うお座 | アメジスト、スギライト、エメラルド |
誕生石や星座石から、購買ニーズを深掘りして製品アイデアとするパターンを6つにまとめましたので、合わせてご覧下さい⇒「宝石から購買ニーズを深掘りする方法6パターン」を見てみる
モチーフ系
ここからは、様々なモチーフに意味を持たせた指輪をご紹介します。
チャームリング
「チャームリング」は本来、魔よけの意味合いが強い「お守り」としての指輪でした。
現代においては、「チャーム=小さな飾り物」」と解釈し、指輪にワンポイントの飾りとして「チャーム」を吊り下げたものが一般的です。
吊り下げる事によって、チャームの動きやモチーフの意味を楽しむ指輪として利用されています。
チャームの形はとても多く、動物、 楽器、植物などさまざまです。
スネークリング
「スネークリング」は、文字通り、腕の部分が2重に巻かれ、蛇のような肌と滑らかなうねりを感じさ
せる指輪です。
蛇は不吉なもの、執念深いものとして嫌われる反面「神の使い」とされたり、永遠性を表すと言われています。
古くから蛇にまつわる言い伝えがあるため、日本では「厄よけの指輪」として利用する人が多いようです。
「モチーフ」は、作品や製品の原型を作る際に役立ちます。全52種のモチーフを図鑑としてまとめましたので良ければチェックしてみてください⇒【要保存】ジュエリー&アクセサリー「モチーフ図鑑」52種 を見てみる
つける指によって異なる名称
指輪はつける位置で意味が変わります。
ここでは、指輪を付ける位置で変わる名称と、その意味についてご紹介します。
左手と右手でも、その意味合いが異なりますので、合わせてご紹介してまいります。
つける指ごとの名称
まずは、つける指ごとの指輪の名称を一覧表にしました。
つける指 | 呼び名 |
---|---|
小指 | ピンキーリング |
薬指 | アニバーサリーリング |
中指 | ミドルフィンガーリング |
人差し指 | インデックスリング |
親指 | サムリング |
ひとつずつ詳しく解説していきたいと思います。
小指につける指輪「ピンキーリング」
いちばん外側にある指なので、髪をかきあげたり、カップを持った時に相手側に見られる指輪です。
右手
あなたが持っている個性や魅力を引き出してくれるのが、右手のピンキーリングです。
右手の小指には表現力を高める効果があると言われています。
左手
左手の小指は「チャンスの象徴」
新しい出会いや、変化が欲しい時は左手の薬指にピンキーリングを。
特に、恋愛面でパワーを発揮する指と言われています。
薬指につける指輪「アニバーサリーリング」
左手の薬指につける「ブライダルリング」は、愛の血管が心臓までつながっているとして、古代エジプトより大事な男女の証とされています。
右手
右手の薬指につける指輪は、通称「ラブリング」と言われ、恋人の存在を意味しています。
心の安定をもたらし、リラックス効果があるとも言われています。
左手
結婚指輪や婚約指輪をつける左手の薬指は、特別な指輪です。
「愛を深める」「絆を深める」パワーがあるとされています。
恋人同士ならペアリングとして。
中指につける指輪「ミドルフィンガーリング」
中指は「直感」や「ひらめき」の象徴と言われます。
指の中では、一番長い指なので、幅が広めの指輪が似合います。
右手
直感を高めたい時には、右手の中指につけるのがおすすめ。
また風水によると、邪気を払う効果があると言われています。
運気を上げたいと思ったら、中指につけると幸運が訪れるかも。
左手
「協調性を高める」と言われている中指。
人間関係を良くしたいと思ったり、判断力を磨きたいと感じたりしたら、中指につけてみては。
人差し指につける指輪「インデックスリング」
何かを指し示したり、指示をしたりする時に使われる人差し指には、「自立心」や「行動力」を高めてくれると言われています。
右手
右手のインデックスリングは、集中力が高まる効果があると言われています。
目標に向けて頑張りたい時や、自分のパフォーマンスを上げたい時は、右手の人差し指につけてみてはいかがだったでしょうか。
左手
精神力を高め、積極性を引き出し、進むべき方向を指し示してくれると言われています。
なかなか行動に移せない、何か悩みがある時には、左手にインデックスリングをつけてみましょう。
親指につける指輪「サムリング」
「サム」は英語で親指の事です。古代ローマ時代には、親指に指輪をつけると「願いが叶う」と言われていたそうです。
右手
右手の親指につける指輪は、「指導者の証」とされています。
威厳を高めて、勇気をもたらしてくれるのが右手のサムリング。
左手
「目標を実現させたい!」「夢を叶えたい!」
という人は、左手の親指に。
信念を貫き、難関に立ち向かう勇気を与えてくれるでしょう。
ここまで解説したような「お客さま目線」による作品アイデアをまとめましたので、合わせてご覧下さい。⇒「顧客目線で作る作品のアイデア”逆転の発想”」を見てみる
指輪の基本タイプ「用途やニーズによる分類」まとめ
今回は、指輪の基本タイプとして「用途やニーズによる分類」についてご紹介致しました。
和装文化を背景に、独自に初田牛て来た日本の指輪は、世界でも特別な位置を持っています。
人生の節目としての記念や、思い出に関する指輪、お守りや縁起ものに関連した指輪、また、つける指によっても変わる、指輪の名称から、新しい製品のインスピレーションを得てみてはいかがでしょうか。
シリーズ【指輪の基本】
シリーズ「指輪の基本」では、指輪の基本的なデザインとその種類について紹介していきます。
全4回をご覧頂くと、より指輪に対する理解が深まりますで、ぜひ最後までご覧下さい。