ロストワックスによるジュエリー制作とは、
「ワックス(WAX)」
という
“ろうそくのロウ”
のような素材を使って、原型となる鋳型(いがた)を作り、
鋳造(ちゅうぞう)によって金属原型を制作する方法です。
ワックスが”ロスト(消失)”するため、
「ロストワックス製法」と呼ばれています。
ロストワックス製法が優れているのは、
制作したワックス原型に対して、忠実な金属原型が得られる事です。
この記事では、ロストワックス製法の特徴について解説致します。
初心者でも安全に、簡単にジュエリー製作が楽しめますが、
デメリットもありますので、ぜひ最後まで記事をご覧下さい。

下記の記事では、ジュエリーアクセサリーの作り方について3つの基本的な方法を解説していますので合わせてご覧ください。⇒「ジュエリーやアクセサリーを制作する3つの基本的な技法」を見てみる
ワックスとは
ワックスとは
“ろうそくのロウ”のような素材
になります。
形、大きさ、硬さ等の種類がたくさんありますので、作りたいデザインに合わせて材料を選択します。

チューブ状、ブロック状など様々な形状がある

以下の記事では、初心者におすすめの彫金工具一覧をまとめましたのぜひご覧下さい。⇒「彫金を始めるための工具リスト」を見てみる
ロストワックスで作れるデザイン例
ここでは、ロストワックスで作れるデザインの一例をご紹介します。
ワックスで製作した原型に忠実な形で、ジュエリー製作を楽しむ事ができます。
ロストワックス製法のメリット
ここでは、ロストワックス製法のメリットについてご紹介します。
初心者でも安心して作れる
ワックスは、金属を削ったり、ロウ付け等の溶接作業を行わないため、初心者でも簡単に、安心して形を作る事ができます。
ワックス用のヤスリが販売されていますが、木工用ヤスリや彫刻刀、カッターなど、様々な道具を用いて、削ったり、彫ったりと、様々な加工が可能です。

ヤスリやカッター、彫刻刃など使用可能
削り過ぎたら「盛る」
ワックスの特徴のひとつが、
低温で溶けること。
60度~80度位で溶かす事ができますので、
半田ごて等で溶かしたワックスを「盛る」なんてことができます。
例えば、削り過ぎた部分を溶かして盛ったり、新たに付け足してボリューム感を出したりと、
自由に形が表現できるのもロストワックス製法の魅力と言えます。
ロストワックスのデメリット
メリットがあるいっぽうで、ロストワックス製法にはデメリットもあります。
ここでは、頭に入れておきたいロストワックス製法のデメリットについてご紹介します。
鋳造が必要
ロストワックス製法では、
ワックスで原型を作っただけでは製品になりません。
ワックス原型を元に「鋳造」を行って、
金属原型にする必要があります。
「鋳造の工程」はとても複雑です。
例えば、ロストワックス製法で指輪を1点制作する場合は次のような工程になります。
この工程を、個人でやるのはとても大変です。
でも、安心してください。
日本全国の主要都市に、鋳造会社(キャスト屋さん、キャスト工場)があります。
直接訪れる事が難しい場合は、
宅配で受け付けてくれるところが多くあります。
まずは、気軽に相談してみましょう。
日本全国のキャスト工場 はこちら
彫金の技術も必要
ロストワックス製法で製品を仕上げるためには、鋳造後の仕上げや石留め、バチカンのロウ付け等、
「彫金の技術(貴金属加工)」
も必要になります。
そのため、ロストワックス製法を学び、
自分で最終的に製品にしたい場合は、彫金を学ぶ必要があります。
ただ、多くのキャスト工場では、石留めや仕上げなども行ってくれますので、自分で仕上げるのが不安、という方は、
気軽にキャスト工場に相談してみてください。
ロストワックスで最初に揃えたい工具一覧
ここでは、ロストワックスでジュエリーを作るにあたって、最初に揃えたい工具を一覧でご紹介致します。
最初に揃えたいワックス工具一覧
- 糸鋸とワックス用糸鋸刃
- ワックスを切断するために使用。金属用より安全。
- ヤットコ
- 糸鋸の刃を取り付ける際や、鋳造後の製品の形を整えるために使用。
- ヤスリ
- ワックスの大まかな形作りに必要。プロペラヤスリや小型のヤスリを使い分ける。
- 紙ヤスリ
- ヤスリ後の表面を滑らかにするために使用。400~1200番程度が推奨。
- リングゲージ
- 指のサイズを測るための道具。
- リングサイズ棒
- 指輪のサイズを確認し、加工時にも使用。アルミ製が推奨。
- 木芯棒
- 指輪の内側を整えるために使用。
- デバイダー
- ワックスに中心線やデザインの線を引くための工具。
- リーマー
- 指輪の内側を削り、サイズを広げるための工具。
- スパチュラ
- 削る、彫る、盛る、整えるといった幅広い用途で使用。
- アルコールランプ
- ワックスを溶かして盛り付ける際に使用。
- スプリングゲージ
- ワックスの厚みを計測するための道具。
- リューター
- 作品の形作りや磨きに使用。
- リューター用カッター
- リューターにセットしてワックスを削る工具。
下記の記事では、ロストワックスで最初に揃えたい工具一覧を、写真付きでご紹介していますので合わせてご覧下さい。
ワックス材料の種類と特徴
ここでは「ワックスの種類と特徴」についてご紹介致します。
ワックスには、大きく分けて「ハードワックス」と「ソフトワックス」の2種類があります。
ハードワックス
硬くて形状を保持しやすく、削って作るジュエリー制作に多用されます。
- チューブワックス
- 指輪制作に適しており、チューブ状。
- 穴のサイズは8号程度。
- ブロックワックス
- 塊状で、バングルや大きな作品向き。
- 四角形や円筒形がある。
- スライスワックス
- 薄い板状で、指輪やペンダント、ピアスに最適。
ソフトワックス
低温(50~80℃)で溶ける柔らかい素材。繊細なデザインや盛り付け加工に適しています。
- ワイヤーワックス
- 線状で柔軟。
- 編み込みや唐草模様のデザインに活用。
- シートワックス
- 薄いシート状。
- 切り抜きや丸みの加工に適し、厚みは0.6~0.7mm以下にならないようにする。
- インジェクションワックス
- 量産用ゴム型への注入に使用。
- 再加工や盛り付けに適する。
- テクニカルワックス(インレイワックス)
- 傷の修復や接着に使用。
- 粘度が低く、サラリとした質感。
- 水溶性ワックス
- 水で溶け、中空デザインの制作に最適。
- クレイワックス
- 粘土状で、自由な造形が可能。
- 不規則なデザインや具象系に向いている。
- 引き目ワックス
- お湯で柔らかくなり、引き目模様を活かしたデザインに適する。
下記の記事では、「ワックスの種類と特徴」について、写真付きでご紹介していますので合わせてご覧下さい。
ロストワックスでジュエリー製作
いかがだったでしょうか。
今回は、ロストワックス製法の特徴や、メリットデメリットについて解説致しました。
ロストワックス製法まとめ
- ロストワックス製法とは
ワックス(蝋)を使って原型を作り、それを鋳造して金属に置き換えるジュエリー製作技法。ワックスが「ロスト(消失)」することから名付けられている。 - ワックスの特徴
- ろうそくのロウのような素材で、形や大きさ、硬さなど種類が豊富。
- 削ったり盛ったりと柔軟な加工が可能。
- メリット
- 初心者に優しい
金属加工や溶接が不要で、木工用ヤスリや彫刻刀などで簡単に加工できる。 - 修正が簡単
60~80度で溶けるため、削り過ぎた部分を「盛る」ことで修正可能。 - 自由なデザインが可能
ワックスでの造形は柔軟で、細かなディテールや独自のデザインが作りやすい。
- 初心者に優しい
- デメリット
- 鋳造が必要
ワックス原型だけでは製品にならず、複雑な鋳造工程が必要。鋳造は専門のキャスト工場に依頼可能。 - 彫金技術が必要
鋳造後の仕上げや石留め、ロウ付けなどの彫金技術が必要。仕上げはキャスト工場に依頼することも可能。
- 鋳造が必要
ロストワックスは、気軽に楽しめるジュエリー製作技法です。
いろんなワックス素材が販売されていますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
また、キャスト工場については、Discordコミュニティ「アトリーエ」の中でも、おすすめの工場についての言及がたくさんあります。
ぜひ、コミュニティも参加してみて下さい。