この記事では、
1. 美しさ
2. 耐久性
3. 稀少性
4. 需要性(流行性)
5. 伝統性
6. 携帯性
について解説致します。
宝石についての理解を深めるとともに、その魅力を紐解いてみましょう。
有機質と無機質の自然
私達をとりまく自然は、
有機質と無機質の2つに分けられます。
動物や植物は有機質で、育てたり飼ったりすることで増やす事ができます。
一方、鉱物は無機質で、いちど採掘したらそれっきりです。
宝石のほとんどは、
無機質の鉱物で、真珠やサンゴ、琥珀など有機質が関係するものは除かれます。
昔から人々は鉱物をたくさんの方法で使用してきましたが、鉱物は私たちの生活に無くてはならない存在です。
石器時代には石で道具を作り、その後、岩で城や寺、教会を建てたり、街や橋を作ったりしました。
人々の知識が増えると、鉄や銅、マンガン、ニッケル、アルミニウムなどの金属を鉱物から取り出し、機械や鉄道、船、飛行機、電信、電話などの材料に使いました。
また、金や銀はお金として使われ、経済が成長しました。
宝石の歴史
宝石の歴史は、昔人々が美しい石を見つけて、お守りや魔よけとして使ったことが始まりです。
中世では宝石は権力を示すもので、王笏(おうしゃく)や王冠に使われたり、特別な人だけが持てるものでした。
ルネッサンス以降、宝石は装飾品として使われるようになり、今では、宝石は飾りだけでなく、財産としての価値もあり、また、投資の対象とされることもあります。
宝石が美しさを引き出す装飾品として、また財産としてあるためには、
以下の6つの特徴が必要です。
<宝石であるための6つの特性>
1. 美しさ
2. 耐久性
3. 稀少性
4. 需要性(流行性)
5. 伝統性
6. 携帯性
鉱物は約2000種類あると言われていますが、
宝石として、これら6つの条件を満たす鉱物は、約4%で約90種類しかありません。
そのうち、
実際に重要な宝石とされるものは、20~30種類にすぎません。
宝石であるための6つの条件
ここからは、宝石が宝石であるための6つの条件について詳しく解説していきます。
まずは、宝石の最も重要な特性である”美しさ”から見ていきましょう。
宝石の美しさ
宝石の条件一つ目は「宝石の美しさ」です。
例えば、色彩の美しくない宝石の原石は宝石とは考えられません。
例えば、黒色や褐色のダイヤモンドは工業用に価値がありますが、宝石としては価値がありません。
一方、真珠は貝から取り出された瞬間から宝石として魅力があります。
しかし、食用貝は宝石のような光沢を持たないため、食用貝から取り出された真珠のような石は宝石としての価値がありません。
宝石の美しさは以下の要素で決まります。
<「宝石の美しさ」要素>
・色
・色の濃さ
・明るさ
・カットの良さ
ルビーやアレキサンドライト、トルマリンの美しい色は、地球の神秘的な働きで作られていますが、
自然の美しさに、カットや研磨を加えることで、その美しさを最高に引き出します。
「玉磨かざれば光なし(宝石はカットが良くないと光がない)」
と言われている通り、
宝石が持っている魅惑的な色彩の発光効果はカットの良し悪しにかかっています。
実際、ダイヤモンドの原石は灰色や黒っぽいですが、ブリリアントカットにすることで美しい輝きが現れます。
ただし、美しさは個人の好みによって異なりますので、ある人が美しいと思う宝石が別の人には美しくないこともあります。
しかし、宝石学では一般的で普遍的な美しさを考えますので、特別な美について深く考える必要はありません。
宝石の耐久性
宝石の条件二つ目は「宝石の耐久性」です。
宝石は永久不減のものではありません。
永久不減の物質が存在するという考えは、人々の想像の世界であって、現実にはそのような物質は存在しないのです。
そのためめ、個人的な装飾品として使用される宝石は、
ある期間その美しさを持続できる抵抗性(耐久性)を持てば十分だと考えられます。
宝石の耐久性は、すべて宝石原鉱である鉱物の自然のままの化学的な成分や結晶構造によって異なってきます。
例えば、耐久性の強い宝石と比較的耐久性の弱い宝石では、宝石鉱の内部の成分や結晶構造の上で大変な違いがあります。
<耐久性の強い宝石の例>
・ルビー
・サファイア<耐久性の弱い宝石の例>
・オパール
・トルコ石
私達が知っている宝石は、長い歴史をかけて多くの鉱物の中から、美しさと共に耐久性の強いものが選び抜かれているため、化学的、つまり結晶構造の上で非常に安定した性質を持っています。
こうした理由から宝石は、なかなか薬品に侵されたり腐敗したりすることがなく、また強い硬度と強靭性のために、短期間に分離したり、壊されたりすることもないわけです。
つまり耐久性とは、
化学薬品類に対して簡単に侵されない
他の物質により傷つけられたりしない硬さ(硬度)がある
と言った事が、基本的な要素である、ということになります。
また、宝石は指輪や、ペンダントとして用いる場合、石英(硬度7)その他の微細な粉末が大部分の空中の塵埃により小さなキズがつき、カット面の美観を損なう結果となりやすいため、石英以上の硬さが望ましいことになります。
私達が宝石として認めることのできない多くの美しい鉱物もありますが、これらの鉱物は硬さや強靭性(耐久性)に問題があるためです。
例えば、緑銅鉱という銅の鉱物はエメラルド・グリーンの美しい色を持っており、色の美しさだけならエメラルドと同じくらいですが、硬度が低いために宝石としての価値は非常に低くなります。
また、硫酸塩の美しい繊維状の鉱物で、蛋白光を持ち、研磨するとキャッツアイに似ているサテインスパーは、耐久性がないために宝石の仲間入りができません。
宝石の稀少性
宝石の条件三つ目は「稀少性」です。
宝石の稀少性は、宝石の価値を決定する重要な要素です。
産出が稀な宝石の需要が高くなると、その宝石の価値はますます高くなるのは経済の原則から言っても明らかです。
また、ある種の宝石は産出も多く、需要も活発なために採掘コストが低くなり、価格も比較的安いものもあります。
例えば、アメジストは極めて多く産出するため、加工料をわずかに上回る程度の価格で比較的に安く、反対にエメラルド、キャッツアイ、ルビーなどは稀少性のため価格が極めて高くなります。
<高価な宝石の例>
・エメラルド
・キャッツアイ
・ルビー
また、最近アクセサリーとして人気のある合成宝石は、その色彩の美しさ、耐久性においては天然宝石に劣らない性質を持っていますが、その価格は生産費と流通経費によって計算されるため、極めて安価になります。
宝石として使用可能な鉱物類は一般的には希少であり、社会の流行やその他の要因によって需要が増加し、価格を高めることがしばしばあります。
また、多くの人々には極くありふれた宝石でも、需要が増加したために価格を高めた宝石もあります。
例えば、ベニトアイトやユークレースがそうです。
宝石の需要(流行性)
宝石の稀少性については、時代によってその性質が違ってきます。
宝石となる、四つ目の条件が「需要(流行性)」です。
中世紀までは王侯、貴族や一部特権階級の持物であった宝石ですが、現在では大衆の誰でも手に入り得る程度の量が必要になりました。
例えば、ダイヤモンドや真珠は、その代表的な例になります。
ダイヤモンドには新しい鉱山も開発され、採取方法も改良されて供給量は増加しています。
真珠もまた養殖技術が進歩して品質の良いものが量産されています。
また、宝石は時代の流行などで需要が急に高まったり、逆に需要がなくなったりします。
例えば、オパールは、ローマ時代には非常に貴重視されたのですが、シェイクスピアはこの石を移り気の象徴として、「貴公の心はオパールそのもの」と言わせていますし、
有名なサー・ウォルター・スコットの小説にもオパールを飾ったことから、不幸をもたらす石として敬遠された話もありますが、イギリスの王室がこの迷信を打ち破って再び流行するようになりました。
日本でのオパールは、戦後流行して活発な需要があり、重要な宝石として年々数多く輸入され消費されましたが、近年ではダイヤモンドが大きくクローズ・アップされてきています。
アメリカでは、1900年代の中頃まではアンバー(琥珀)が非常に流行していましたが、現在では宝石店の店頭では見ることができないほど、その人気が失墜してしまいました。
また、合成宝石の誕生は、同じ天然石のある種の石の人気と価値を高めたり、失墜させたりします。
このように、ひとつの時代から他の時代への流行の移り変わりは、ダイヤモンドや各種色石の需要に少なからず影響を与えていますし、時には大きな石に、ある時には数多くの小さな石に需要が集中したり、それからそれへと宝石の需要は移り変わっていくものです。
特に最近の傾向としてジュエリーデザインの比重が宝石自体に比べて高まっていますので、今後はデザインによっても宝石の需要(流行)が大きく影響されるでしょう。
<宝石の需要が変動する理由>
・時代の流行
・社会の変化
・合成宝石の登場
・迷信や物語による影響
・ジュエリーデザインの変化
宝石の伝統性
宝石の価値とその需要に最も重要な影響を与えるものとして、
宝石の持つ歴史的な伝統があります。
この伝統は、宝石が人々の装飾品や地位の象徴、または交換の媒体として芸術や学問、人間の全生活を通じて幾世紀にもわたって培われてきたもので、古くから宝石業者の努力と王位や教会、または各個人の財産や地位の象徴として、宝石の持つ社会的価値、または重要な知識が創造してきたものになります。
宝石の需要は、社会的象徴の価値や財宝としての交換価値の認識から、宝石の稀少性によって後押しされました。
所有できないもの、あるいは所有することが困難であるものを持ちたいと願うのは、人々の自然な欲望です。
もし、宝石が美しいだけで人々に欲されているものとしたら、合成宝石や模造石でも充分です。
合成宝石が天然宝石にとって代わることのできないのは、天然宝石が持つ稀少性と、その稀少性に裏付けされた伝統を持たないからです。
宝石を地位や名誉の象徴として、また財宝として所有したいとする多くの人々の欲望は、比較的に数少ない天然宝石の発見、採掘に多くの人々を駆り立てたものと言えます。
イギリスの王位の象徴である王冠には、ダイヤモンドやルビー、真珠が輝いており、ヨーロッパ諸国の王室によって所蔵され、貴族たちの地位の象徴として、崇められたりしたことからもわかる通り、宝石は重要な伝統を確立したのです。
宝石の携帯性
宝石としての条件、五つ目は「携帯性」です。
この特性は、ダイヤモンドやルビーのような高級宝石からトルコ石や玉髄のような一般的な宝石に至るまで、すべての宝石に見られます。
宝石の本質が美しさにあることから、その大きさや重さには自然と一定の限界がありますが、ダイヤモンドをはじめとする多くの高級宝石は、携帯が不便になるほど巨大な原石が産出されることがありません。
どんなに大きく立派な原石でもカットされるので、最終的にはかなり小さくなります。
地上最大とされるカリナン・ダイヤモンド(スター・オブ・アフリカ、原石の重さ3,106カラット)も、9個の大きな部分と96個の小さな部分に分割され、カットされました。
財宝としての宝石は、小さなものほど高い価値を持つものとして代表されます。
フランスの文豪マルローが宝石のことを「小さな入れ物に閉じ込められた無限の富」と言ったように、宝石の所有者自身が極めて高い価値のものを簡単に運べなければ意味がありません。
一国一城にも匹敵する価値を小さく圧縮して得るのが宝石であり、国際的に知られた多くの財産所有者が、多額の資金を宝石に投資する要因もここにあります。
革命や内乱によって、王位や政権を失った国王や政治家が、所有する宝石を海外に運び出して難を逃れたという事実は、ヨーロッパや中近東、南アフリカ、東南アジアなどの国々でしばしば見られます。
財宝として宝石の携帯性を最も重視する習慣のあるヨーロッパ諸国では、古いことわざに「乞食でさえ宝石を持つ」とまで言われています。
このように、宝石が宝石であるためには、携帯性も備わっている必要があります。
宝石の条件まとめ
以上、今回は、宝石が宝石であるための6つの条件(特性)を解説致しました。
<宝石が持つ6つの特性>
1. 美しさ
2. 耐久性
3. 稀少性
4. 需要性(流行性)
5. 伝統性
6. 携帯性
宝石の歴史や評価基準、価値に影響する要因について学び、理解を深めましょう。