ジュエリーアクセサリーの制作過程では、成形後に紙やすりやキサゲ・ヘラで、表面の小傷やヤスリ跡を取り除きます。
そして最後、
貴金属の光沢を出すために行うのが、バフによる最終仕上げです。
バフによる仕上げには、大きなバフを取付ける
「バッファー(バフモーター)」と、
小さなバフをセットする
「リューター(ルーター)」や「フレキシブルシャフトモーター」などがあります。
いずれもモーターを回転させたバフに研磨剤をつけて製品を磨きますが、バフと研磨剤にもたくさんの種類があり、デザインや素材の特徴に合わせて選ぶことが大事です。
そこで今回は、初心者の方に向けて、
バフ種類と研磨剤の種類について解説致します。
仕上げは、職人や作家さんによって異なりますので、これが正解といったものはありません。
今回の記事を参考にして頂き、自分が作りたい製品に合わせてバフと研磨剤を選択して頂ければ幸いです。
下記の記事では、デザインによって異なるジュエリーの仕上げ工程について、その手順を解説していますのでご覧下さい。⇒「デザインによって異なるジュエリーの仕上げ工程」を見てみる
バフの機械
初めにバフ仕上げに必要な機械をご紹介します。
リューター(ルーター)
回転するモーターとハンドピースと一体になっている機械(マイクログラインダー)が「リューター」です。
リューターの先端工具は用途に合わせて入れ替える事ができるため、穴あけや切削、研磨用など、様々な先端工具が販売されています。
価格帯も様々で、ホームセンターで買えるようなホビー系から、プロが使用する10万円台のものまでありますが、数千円のホビー系のモーターは長時間の使用に耐える事ができないため、おすすめできません。
初心者におすすめのリューターは、下記の記事で詳しくご紹介していますので、合わせて御覧ください。
フレキシブルシャフトモーター
吊り下げて使用するのが「フレキシブルシャフトモーター」です。
特に人気の高い「FOREDOM(フォアダム)」フレキシブルシャフトモーターは、中国工場での生産で、従来よりも買いやすくなりました。
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バッファー
研磨力が強いバッファーは、バッファー本体と集塵機も合わせて必要になります。
また、ある程度作業スペースも確保する必要があります。
バッファー本体
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集塵機
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以下の記事では、初心者におすすめの彫金工具一覧をまとめましたのぜひご覧下さい。⇒「彫金を始めるための工具リスト」を見てみる
バフの種類
ここからは、バフの種類について解説致します。
素材ごとに解説致しますが、それぞれ、
バッファー用の大きなバフと、
リューターやフレキシブルシャフトモーターに取付けて使用する
豆バフと大きくわけて2種類の大きさがあります。
バッファー用
バッファー用のバフも、大きさが75mm~240mmくらいまで数種類あり、バッファーに合わせて大きさを選ぶようにします。
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リューター用
写真は軸付きのもので、バフの直径も16mm~24mm位まであります。
大きいとブレが生じますし、だんだんと摩耗していきますので22mm位がおすすめです。
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布バフ
布バフは、どの研磨剤とも組み合わせられる基本のバフです。
新品の布バフはバフを回転させておいて、バフかきやヘラ先などで、布のケバ取りをしてから使用します。
リューター用にはキャラコ製布バフがあります。
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皮バフ
セーム皮で作られたバフで、研磨力強く、硬いバフです。
布バフほどには細部にバフがあたりませんので、ピリッとした曲面を出したい時に使うには便利です。
皮バフはバッファー用の大きなバフと、ハンドピース用の軸付の小さなバフと両方がありますが、後者を布バフの前の下バフ用として使うことが多いようです。
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フェルトバフ
広い面や、小傷やヤスリ目が多い部分の研磨、面だし仕上げに最適なのがフェルトバフです。
様々な種類があり、円盤形やコーン形、円錐形もあります。
円盤形は平面仕上げに、コーン形は指輪の内側を、 円錐形は円盤の入らない細部を仕上げたい時に便利です。
フェルトバフは、自由な形に削る事ができますので、品物にあった形状に削り出して使うと、作業がスムーズに進みます。
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PVA 砥石 (ビニールバフ)
アランダム・カーボンをビニールで固めた砥石で、面仕上げの荒みがきなどに使用します。
グレー色と白色の2種類があり、グレーは120番から800番までの各種があります。
白色は1000番と1500番があり、ハンドピース用には軸が付いていて「PVA軸付き砥石」と言われます。
また、青粉入りのみがき用PVA砥石もあるので、白棒の次の工程にも利用可能です。
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下記の記事では、アクセサリーの平面仕上げについて解説していますので合わせてご覧ください。⇒「アクセサリーの平面仕上げのテクニックと3つのコツ」を見てみる
研磨剤の種類
ここからは、研磨剤について解説してまいります。
仕上がりの結果に影響が出ないよう、研磨剤によってバフを使い分けるようにします。
トリポリ
切削力がとても強い研磨剤です。
材料は、珪石のキズ取り用の油脂研磨剤でモース硬度は7になります。
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青棒(青粉)
「青棒(青粉)」は、酸化クロムが原料の油脂研磨剤です。
硬度が高く、粒度も細かいので、貴金属すべての仕上げ用としても最も広く利用されています。
別名「グリーンルージュ」と呼ばれています。
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赤棒 (赤粉)
最終仕上げに用いられる事が多い「赤棒 (赤粉)」の原料は、トリポリよりも上質の酸化鉄です。
銀や金の青棒あとの仕上げ研磨に使用される事があります。
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白棒 (白粉)
「白棒(白粉)」には、たくさんの種類があります。
材料は、ホワイトアランダムが原料で、中みがき用として使用されることが多い研磨材です。
研磨力が強いので、適宜に使用しないとダレが生じるため注意が必要です。
種類がたくさんありますが、中仕上げとして考えるなら#800位がちょうど良いでしょう。
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ノンクロン
「青棒(青粉)」と同程度の研磨力ながらも、油脂分が少ないため、サラッとしているのがノンクロンです。
白棒#1500くらいの後に使用する事が多いとされています。
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ピカール・ウィノール
「ピカール」や「ウィノール(現在はグラノールと呼ばれています)」は、液状の金属研磨剤です。
布またはセーム皮につけて、手仕上げする際に最適です。
研磨剤を布やセーム皮に染み込ませ、製品を強くこすった後、 乾拭きをしてください。
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セーム皮
彫金工具で人気の「Harp」社製のセーム革は、和鹿の皮では無く「キョン」の皮です。
セーム皮は、貴金属や時計など磨く最高品質の素材で、乾拭きするだけでも綺麗な光沢面を得る事ができます。
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下記の記事では、量産する場合の仕上げテクニックを5つご紹介していますので合わせてご覧下さい。⇒「アクセサリー量産仕上げのテクニック」を見てみる
仕上げバフと研磨剤の種類まとめ
今回は、初心者の方向けに、仕上げバフと研磨剤の種類について解説致しました。
デザインや素材によって、
バフも使用する研磨剤も異なってきますので、
作りたい製品に合わせて、用意するようにしましょう。
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