世界で一つしかない「一点物オーダーメイド」は、個性を大切にする現代においてニーズが高まっています。
この「オーダーメイド」が普及してきた背景には「リフォーム」の増加が大きく関係しています。
祖母から母へ、母から娘へと受け継がれ、時代に合わせて改作を行ったり、デザインの一部を変更する「ジュエリーリフォーム」の需要増加を背景に、「オーダーメイド」は発展してきました。
その結果「オーダーメイド」には、大きく分けて2つのタイプができました。
- 素材ベースのオーダーメイド
- ゼロベースからのフルオーダー
です。
今回は、各オーダーメイドの特徴や必要な知識について紹介したうえで、オーダーメイドを進めるうえで重要なポイントを解説していきます。
下記の記事では「一点もの」と「量産品」の制作プロセスの違いについて解説していますので合わせてご覧下さい。⇒「ジュエリーのデザインプロセス!一点物と量産品の違いについて」を見てみる
オーダーメイド両者の違い
まずは、
- 素材ベースのオーダーメイド
- ゼロベースからのフルオーダー
両者の違いと特徴について解説致します。
素材ベースのオーダーメイド
「素材ベースのオーダーメイド」とは、デザインのメインとなる素材が何かしら用意されている場合です。
例えば、宝石が好きでルースだけ持っている人は結構多いと思います。
そのルースを元に、デザインを起こして、オリジナルの指輪やネックレスを作りたいといったケースが、この「素材ベースのオーダーメイド」に該当します。
リフォームとは異なり、石を外したりといった手間はありませんが、石枠をつける事によって、宝石が暗く見える、といったことは起こりえますので、お客様に対して、石留めの前に見せたり、事前に説明しておく事が必要になる場合があります。
ゼロベースからのフルオーダー
「ゼロベースからのフルオーダー」は、デザインのアイデアや、ラフ・スケッチなどを元に、素材を調達して制作するオーダーメイドです。
この場合、製品のイメージを、お客様との認識を、できるだけすり合わせておく事が必要になってきます。
中には、高度な要求をイメージされているお客様もいますので、実際に素材を調達して、製作してみたら、想定以上のコストがかかってしまった、なんてことにもなりかねません。
オーダーメイドに必要な知識
「素材ベースのオーダーメイド」であっても、「ゼロベースからのフルオーダー」であっても、様々な知識が必要になります。
- 地金の知識
- 宝石の知識
- 宝石以外の素材知識
- デザインの知識
- 加工の知識
- コスト計算
ここでは、オーダーメイドに必要な知識についてまとめました。
いずれも、オーダーメイドを進めていくうえで必須の知識になりますので、ここで確認しておきましょう。
地金の知識
オーダーメイドにあたって、地金の知識は不可欠です。
宝石を留めるにしても、チェーン等の部材を調達するにしても、地金の知識を知らなければ、製品を作ることさえできません。
シルバー、金、プラチナ、あるいは、赤銅(しゃくどう)や木目金といった、日本の伝統素材に至るまで、豊富な地金の知識を持つ事が、オーダーメイドを進めるにあたって必要になります。
「ジュエリー制作ロードマップ」では、貴金属地金に関する知識をまとめていますので、合わせてご覧下さい。⇒「ジュエリー制作ロードマップ|基礎知識|素材|貴金属」を見てみる
宝石の知識
宝石のカット種類ごとに、その魅力を引き出すデザインが異なります。
爪で留めるのか、地金で留めるのか、彫り留めを加えるのか、といった石留めの知識と併せて、宝石の耐久性という事についても知っておきましょう。
宝石についても「ジュエリー制作ロードマップ」にまとめていますので、合わせてご覧下さい。⇒「ジュエリー制作ロードマップ|基礎知識|素材|貴金属」を見てみる
宝石以外の素材知識
宝石以外にも、ガラスや陶器、漆などの知識があれば、幅広いオーダーメイドの要求に応える事ができるし、デザインの幅も広がります。
普段から、ジュエリー以外の分野に目を向け、クリエイティブな感性を養うといったことも、オーダーメイドを成功させるうえでは重要なポイントとなります。
デザインの知識
ジュエリーやアクセサリーに関する、アイテムの構造が理解できる、全てのアイテムのデザインができると、お客様の要求をその場で表現でき、完成イメージをすり合わせることができます。
また、自分で製作しない場合、職人にデザインの詳細を伝えなければいけませんの、次に紹介する「加工の知識」と合わせて、アイテムの構造はしっかりと理解しておきましょう。
加工の知識
自分で加工出来なくても、加工について熟知していれば、職人や工場に発注する際もスムーズに行う事ができます。
貴金属加工やワックスモデリングといった、ジュエリー制作の基礎的な技術はもちろん、七宝や宝石研磨加工などの知識もあると、創作の幅が大きく広がるでしょう。
コスト計算
用意する地金の重量や、宝石の調達にかかるコストが計算できなければ、要求されたオーダーメイドの予算や、必要な利益を確保する事ができせん。
オーダーメイドの場合、最初から形が見えているわけではありませんので、デザインを元に、必要な地金量を計算し、デザインと予算にあった部材や宝石を調達する必要があります。
そのため「コストが計算できる能力」は、オーダーメイドを進めるうえで、もっとも大切な能力となります。
コスト計算については、下記の記事で詳しくまとめましたので合わせてご覧下さい。⇒「一点物オーダーメイド制作に必要な、コストの計算方法」を見てみる
オーダーメイドを進めるポイント
ここでは、オーダーメイドを進めていくうえで、重要な要点について解説致します。
- デザイン
- 制作
- 検品
デザイン
「素材ベースのオーダーメイド」であっても、「ゼロベースからのフルオーダー」であっても、デザインがなければ、製作する事ができません。
「素材ベースのオーダーメイド」であれば、与えられた宝石などの素材を元にデザインを描き、お客様との打ち合わせを綿密に行い、双方、納得のいくデザインと価格で進められるようにする事がポイントです。
「ゼロベースからのフルオーダー」であれば、宝石や部材のサンプルを予め用意しておき、サンプルを元に進めていくとスムーズです。
また、自分で製作しない場合は、職人や工場に、アイテムの仕様を正確に伝えなければなりません。
そのため、完成イメージを伝える立体図と合わせて、
- 上面図
- 側面図
- 正面図
の三面図を用意します。
また、必要であれば、
- 展開図
- 断面図
など、製作に必要な図面を用意する場合があります。
制作
自分1人で製作できる場合は、お客様との話し合いで決定したデザインを元に進めていきます。
自分で製作出来ない場合、職人や工場に依頼する事になりますが、技術ごとに分業化されている場合が多くあります。
そのため、原型は原型師に、彫金は彫金師に、石留めは石留めの職人さんに依頼するケースがありますので、各技術者同士をうまく連携させることも、大切な仕事になります。
検品
製品が仕上がったら、クレームにならないよう、10倍ルーペで検品します。
また、石の緩みがないか、バフの磨き残しがないか等も、しっかり検品しましょう。
下記の記事では、宝石のカット全25種類について、画像付きで詳しく解説していますので合わせてご覧下さい。⇒「【全25種】宝石のカット種類一覧」を見てみる
オーダーメイドの特徴と注意点まとめ
今回は、一点物オーダーメイドに見られる「2つのタイプ」
- 素材ベースのオーダーメイド
- ゼロベースからのフルオーダー
について、その特徴と注意点、仕事として進める際のポイントについて解説致しました。
必要な知識や技術が伴わない状態で、安易にオーダーメイドを引き受けてしまうと、想定よりも高度な品質を要求されてしまう事も起こり得ます。
今回ご紹介した知識は、最低限のものとなりますので、当サイトの「ジュエリー制作ロードマップ」も参考にして頂き、お客様の要求に応えられるよう、スキルアップしていきましょう。
下記ページは、初心者~中級者に向けた「ジュエリー制作のロードマップ」です。どこから始めたらいいかわからない方はぜひチェックしてみて下さい。⇒「ジュエリー制作のロードマップ」を見てみる