シリーズ「指輪の基本」では、指輪の基本的なデザインとその種類について紹介していきます。
全4回をご覧頂くと、より指輪に対する理解が深まりますで、ぜひ最後までご覧下さい。
第1回「リングの構造と各部名称」
日本のジュエリー文化は、世界でも特別な位置を持っており、特に指輪は、日本のジュエリーの中でも際立った存在で、日本人の美意識や歴史的な文化と深く結びついています。
欧米では、ネックレスやブローチ、イヤリングと言ったジュエリーが主役となる中、日本においては、指輪が大きな地位を維持してきました。
その理由として、長らく維持してきた和装文化があります。
和装では、ネックレスやブローチの美しさを活かすのが難しく、帯留めと指輪が日本のジュエリーとしての地位を確立したからです。
今回は、日本のジュエリー文化における「指輪」の基本的な構造を解説してまいります。
・中石
・脇石
・石座
・爪
・肩
・腰
・腕
など、古くからある伝統的なリング構造だけでなく、近代のリング構造も合わせて解説しましたので、ぜひ最後まで記事をご覧ください。
ネックレスやブレスレットについては、下記の記事で解説していますので合わせてご覧下さい。⇒「ネックレスやブレスレット向け!代表的なチェーン部材12種類!」を見てみる
リングの基本構造
指輪の基本構造は、下図のようになっています。
昔ながらのリング構造
- 中石(センターストーン):中心となる宝石
- 脇石(サイドストーン):中石を引き立てる宝石
- 石座(マウント):宝石が乗っかる座
- 爪(プロング、クロウ):石を留める爪
- 腰(ベース):石座と腕の間を繋いでいる部分
- 肩(ショルダー):腕を石座や腰に繋いでいる部分
- 腕(シャンク、アーム):指にはめる部分
- 指なじみ:腕の内側の指にあたる部分
現代のリング構造
現代は、ファッションを日常的に楽しめるよう、高さ(立ち)の低いリングが主流となっています。
そのため、肩と腰がない、あるいは肩と腰のボリュームが少ないデザインが多くなっています。
- 中石(センターストーン):中心となる宝石
- 脇石(サイドストーン):中石を引き立てる宝石
- 石座(マウント):宝石が乗っかる座
- 爪(プロング、クロウ):石を留める爪
- 肩(ショルダー):腕を石座や腰に繋いでいる部分
- 腕(シャンク、アーム):指にはめる部分
- 指なじみ:腕の内側の指にあたる部分
下記の記事では、「地金と宝石による分類」をもとに、指輪の基本的なデザインとその種類をご紹介していますので合わせてご覧下さい。⇒「タイプ別リングデザイン:地金と宝石による分類」を見てみる
各部の名称と役割
ここからは、各部の名称と役割について詳しく解説してまいります。
石まわり
石まわりの構造は次のようになっています。
中石(センターストーン)
指輪の石枠に留められていない宝石は「ルース(loose)」や「裸石(はだかいし)」と呼んでいますが、 加工の段階では「中石(石)」や「センター・ストーン」 「メイン・ストーン」等と呼ばれます。
「中石(石)」や「センター・ストーン」は指輪の中心となる宝石となり、指輪の構造の中で、一番高い位置にあるのが一般的となります。
下記の記事では、宝石のカット全25種類について、画像付きで詳しく解説していますので合わせてご覧下さい。⇒「【全25種】宝石のカット種類一覧」を見てみる
脇石(サイドストーン)
中石の両脇や、中石を取り囲むようにセッティングされるのが「脇石(サイドストーン)」と呼ばれています。
石座(マウント)
「石座(マウント)」は、宝石を乗せる台座です。
美しい宝石の魅力を最大限に引き出すためにも、しっくりと落ち着く石座が良い石座といえます。
宝石のカットには、「カボションカット」や「 ファセットカット」などがありますが、その宝石のカットや宝石の特徴に合わせて様々な石座が作られます。
なお、石座のなかでも、石のはまる部分を「ベゼル」や「シャトン」と呼ばれる事もあります。
石座の大きさ
石座は、原則として、上から見た場合に石に隠れるように作られています。(フクリン留めを除く)
カボションカットの宝石を用いる場合は、宝石の外周と石座の外周が一致するように作ります。
ファセットカットの宝石を用いる場合は、宝石の外周よりやや小さく作ることによって、石座の側面からも光が入りこむため、 宝石の透明度や輝きが強調されるようになります。
フクリン留めの場合
フクリン留めの場合は、石座の中に石が収まるように作ります。
そのため、石座の厚みの分だけ、宝石の周りに地金が見えるようになります。
爪(プロング、クロウ)
「爪(プロング、クロウ)」は、宝石をしっかり留める役割を持っています。
宝石の大きさや美しさを損なわずに、その魅力を引き出せるよう、宝石の雰囲気に合ったデザインの爪を選びます。
主な爪の仕様
4本や6本の爪を、石座の対角線上に合わせて付けるのが一般的ですが、他にもバラエティが豊富で、爪の形も様々です。
石座がしっかりしていれば、爪は最低2本(2箇所)あれば、宝石を留める事ができます。
下記の記事では、丸線2本で作る4本爪の石枠の作り方を動画を交えてご紹介していますので合わせてご覧下さい。⇒「丸線だけで作る、ラウンドカット用”4本爪”絞り枠」を見てみる
フクリン
「フクリン(覆輪)」は爪と異なり、ひっかかりが少ないため、ファッションジュエリーの多くに採用されています。
彫り留め
「彫り留め」は一見すると爪が無いように思えますが、タガネで地金を彫り起こして留める場合は、極小の爪があります。
下記の記事では、ジュエリー制作に必要な「石留めの種類37種」と、その留め方の概要についてまとめましたので合わせてご覧下さい。⇒「【全37種】石留めの種類と技法」を見てみる
リング腕まわりの構造
腕まわりの構造は、下図のようになっています。
刻印は、サイズ直し部分に被らないよう打刻しましょう。
肩(ショルダー)
「肩(ショルダー)」は、腕を石座や腰に繋いでいる部分です。
腰同様に、現代においては、肩部が小さかったり、あるいは、肩部がまったくないデザインが多くなっています。
肩の種類には、「飾り肩」「切り込み肩」などがあります。
腕(シャンク、アーム)
「腕(シャンク、アーム)」は、指にはめる部分で、いわば指輪の土台となる重要な部分です。
指あたりがよく、指によく馴染むだけでなく、指輪全体のデザインにマッチした腕が良い腕と言えます。
代表的な腕のデザイン
腕の代表的なデザインとして
- 一本腕
- V字腕
- 抱き合わせ腕
- ひねり腕
- 割り腕
などがあります。
腕の地金断面
腕は、指輪全体のデザインに馴染むよう、地金の厚みや幅を変えたり、断面の形状を変えたりして作ります。
代表的な、腕の地金断面は
- 平角(ひらかく)、平打ち
- 甲丸(こうまる)
- 平甲丸(ひらこうまる)
- 鎬(しのぎ)
- 剣腕(けんうで)
などがあります。
なお、腕は正面から見た時に”真円”となるのが原則ですが、他にも、四角形の角を丸めたものや、三角形の腕、六角形や八角形の腕もあります。
下記の記事では、甲丸リングの作り方を動画を交えて解説していますので合わせてご覧下さい。⇒「基本のシルバー甲丸リングの作り方」を見てみる
指なじみ
腕の内側の、指にあたる部分全体を「指なじみ」と言います。(「指あたり」とも言う)
内側の角を滑らかに研磨することによって、着け心地の良い指輪になります。
刻印部分
ゴールドやプラチナの指輪は、基本的にサイズ直しが可能です。(※)
サイズ直しによって、刻印が消えてしまっては問題ですので、刻印はサイズ直しの影響を受けない位置に打刻します。
下記の記事では、刻印を打たなければいけない理由と、日本における刻印の種類、外国のホールマーク制度についてご紹介していますので合わせてご覧下さい。⇒「刻印の種類と打つ理由!ホールマークについて解説」を見てみる
サイズ直し部分
サイズ直し部分は、縮める事を考慮して、できるだ多く地金を空けておきます。
概ね10mm~15mmくらい確保しておけば良いでしょう。
リングの構造と各部の名称まとめ
今回は、指輪の基本として「リングの構造と各部の名称」について解説致しました。
日本のジュエリー文化の象徴でもある「指輪」は、現代のファッションに合わせて、日常的によりつかいやすくデザインされています。
指輪の各部の役割を理解して、現代のファッション、ジュエリー文化に合わせて、より魅力的な製品を作っていきましょう。
下記の記事では、一点物と量産品のデザインプロセスについて詳しく解説していますので合わせてご覧ください。⇒「ジュエリーのデザインプロセス!一点物と量産品の違い」について見てみる
シリーズ【指輪の基本】
シリーズ「指輪の基本」では、指輪の基本的なデザインとその種類について紹介していきます。
全4回をご覧頂くと、より指輪に対する理解が深まりますで、ぜひ最後までご覧下さい。